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9月 青泉集(西東京・海外) 島袋眞砂美 選

9月 青泉集(西東京・海外) 島袋眞砂美 選

能登慰霊

東京 西八王子 平山 則廣

一面の焼け野原に立つ洋館のヴィーナス像が黒く微笑む
陽は落ちて御詠歌の声天昇(あまのぼ)り月の光にとけて消えゆく
1首目、一分の隙もなくみごとな描写です。映像がくっきりと目に浮かんできます。2首目、言霊が響きあい、流れるような調べの美しさに、心打たれました。

母の日に

東京 西東京 髙橋 義昭

吾が頬を涙流して打ちし母その慈しみを今ぞ詫びいる
薔薇の花手入れする母微笑みて聖母の如き眼差し向ける
「父は照り母は涙の露となりおなじ恵みに育つなでしこ」。母の愛は慈愛と言われます。すてきな短歌を詠むことができたのも、しきなみ短歌のお陰ですね。

遅刻

東京 調布 内川 直樹

スマホ鳴りテレビを消して遅刻知る手帳開くと集合時間
八階の表示動かずじっと待つエレベーターよ早く来てくれ
集合時間にスマートフォンが鳴って、遅刻を知ったのでしょうか。4コママンガのような起承転結がリアルです。急いでいる時に限ってエレベーターが遅いですね。平明で臨場感のある詠みっぷりです。

生きる道

東京 下丸子 櫛引 健雄

人間の愚かさ表す「自分事」八十一もある事を知る
仕事とは何だろうかと考える生きる事すら分からないのに
人間の愚かさを表す自分事が、81もあることを何で知ったのでしょうか。純粋倫理を学び短歌を詠んでいくうちに、生きる道も分かってくるに違いありません。応援しています。

ブラジル

米国 南カリフォルニア 佐藤 昭

少しずつシュラスコの肉味わいていつの間にかに満ちてゆく腹
七時なる日本は朝の光さし地球儀の裏夜のブラジル
ブラジル発祥のシュラスコを、現地で戴いたのでしょうか。2首目、日本の朝とブラジルの夜を平明に詠まれました。

五月の連休

東京 糀谷 山村 幸

夢をみる夜行列車は広島へ笑顔の友とまた旅をする
御朱印につられて歩く寺社巡り喜寿の散歩を脳トレと称す
5月の連休は、友人と夜行列車でのんびりと旅行されたのですね。「寺社巡り喜寿の散歩を脳トレと称す」すてきです。

ランドセル

東京 西東京 山田由美子

ランドセル決まりて笑顔の孫娘ほっぺは桃色うれしはずかし
よく似合う紅桃色のランドセル孫の夢乗せ来春を待つ
ランドセルは、作者からお孫さんへのプレゼントでしょうか。紅桃色のランドセルすてきですね。「孫の夢乗せ来春を待つ」、ワクワク感が伝わります。

短歌

山々の残雪のこる六日町かえるが鳴けば田植始まる
(東京 南大塚 笹原美智子)
函館を出(い)でて津軽の波静か宵の滄溟月渡りゆく
(東京 要町 鈴木 誠一)
稲佐山(いなさやま)長崎市街一望す青いレーザーが点(つ)く爆心地
(東京 調布 山口俊一郎)
「まつりか」の香り漂う帰り道飾らぬままの私にもどる
(東京 要町 川瀬さなえ)
墓じまい親ご先祖の御霊(みたま)らは小高い山から桜島望む
(東京 きたしな 忍田 文子)
六時半街は目覚めて動き出すタイの観光楽しみ始まる
(東京 調布 瀬野ゆみ子)
如月の母との思い出瑞泉寺(ずいせんじ)黄水仙咲き庭彩りぬ
(米国 南カリフォルニア 鰐渕りゅう)
朝ブルゾン昼半袖で夜セーター気温の変化体しんどい
(東京 きたしな 忍田 茂生)
娘らが小遣いで買いしハンカチを不意打ちにもらう母の日の朝
(東京 大泉 吉江 悦子)
産みの母と育ての母の墓参り芒かきわけご無沙汰詫びる
(東京 糀谷 幸田 公子)
ホームでも車椅子こぎ見送りぬドア閉まるまで揺れる母の手
(東京 小金井 太田 啓子)
富士山が雲の向こうに隠るとも尊き姿そこに感ずる
(東京 倫研 森田 賢弥)
父親の次なる目標自動車の運転目指しリハビリ取り組む
(東京 倫研 澁谷 護)
間に合った短歌教室へ辿り着く道行く人のスマホを頼りに
(東京 大森 山口喜久代)
あの世などありはせぬにと思えども母を偲びぬ五月日曜
(東京 調布 佐藤 雄司)
ネモフィラの花一面に咲きほこり高層ビル群借景も映え
(東京 六郷 中溝 滋子)
婚活の話題口にし我が娘待ったかいあり良縁願う
(東京 王子神谷 岩﨑 清美)
玄関にいぶりがっこの匂い満ち我が食欲激しくそそる
(東京 町田法人 齋藤眞知子)
ボランティア十年経たと感謝状まだ続けよう生きる張合い
(東京 野方 東保 敦子)
古希を過ぎ習字の手習い始め居り筆下しにて胸の高鳴り
(東京 昭和 紅林 淨子)
釣り場にて燈台描きし息子の絵短歌を添えて壁に飾れり
(米国 南カリフォルニア 金川 紀恵)

選をおえて

皆様の6月投稿の作品の選をしている7月、奄美大島は梅雨が明けました。飛雲集への昇格者がいたので、今回は71名の投稿でした。 さて、新年度からは「しきなみ短歌」もアプリで見れることになりました。時代の波で変化する形、変化しない「しきなみの心」。易不易の原理を銘肝して、この先も生活の浄化と個性の発揚を目標とする、「しきなみ短歌」と共に歩んで参りましょう。次回も皆様の愛し子である短歌をお待ちしています。