亡き夫
茨城 知手 古内 愛子
「又来るね」娘の声に顔くずし話せぬ夫は涙で送る
泣き顔で娘見送る亡き夫を思い出しては一人涙す
評
入院中のご主人の様子でしょうか? 「顔くずし」「話せぬ夫」と切ない描写が続き、2首目ですでに亡くなられたことが分かります。短歌に詠んで残しておきたいですね。神々の里
埼玉 越谷中央 石川 隆美
高千穂の夜の神楽座に舞いし神岩戸神話を今に語りぬ
高千穂の真名井の滝を見上げおりしぶきと共に降りくる光
評
偶然にも私も5月に高千穂を訪れました。神話の里、まさに神々の存在を実感できる景色でした。2首ともに上手くまとめられ、「私もこんな風に詠みたかった」と思いました。老いたる母
茨城 那珂 安嶋久美子
手を取れば老いたる母の体温が伝わって来るそれだけで良い
「お母さん白湯を一口飲みましょか」食べて欲しくてあれこれと問う
評
今は老いてしまった母。そんな母のぬくもりに「それだけで良い」と。2首目は、母との日常のやり取りを切り取られていて、切ない心情が読者に伝わります。病(やまい)
埼玉 越谷中央 石垣李枝子
病(やまい)ゆえ一人で帯が結べない作り帯にて茶の湯に通う
学び合う友の人柄良き故に痛みも忘れ続く茶の道
評
どんな病なのかはわかりませんが、年齢とともに手が回らなくて、帯が結べないのは共感します。作り帯を着けてでも和服で茶道のお稽古に通われているのですね。立派です。雨の皇居
埼玉 所沢中央 安藤 勝男
桜咲く雨の外苑散策す相合い傘で妻と肩寄せ
小雨ふる坂下門にて幼き日の父の万歳が耳にこだます
評
「雨の外苑」「坂下門」という言葉に魅かれました。妻との相合い傘も情景が目に浮かぶようです。昔、父親が皇居に向かって「万歳」をしていた思い出も切ないですね。筋トレ
埼玉 久喜本町 平沢健一郎
筋トレは嘘つかないと言うけれど腹の脂肪は今日も居座る
五十キロ背中に乗せてスクワット数え違えたコーチを睨む
評
ユーモアのある2首。思わず笑ってしまいました。50キロも背中に乗せてスクワット! そりゃあ、数え違えなくても、コーチを睨みたくなります。亡き妻
埼玉 久喜本町 菅野 孝一
玄関の隅に置かれしピッケルは亡き妻愛用思い出つのる
亡き妻は椅子にすわりて体操す思い浮かべて我もするなり
評
妻の愛用のピッケルとあるので、お元気な頃は山歩きをされていたのかな? と想像しました。椅子に座ってでも体操をされていたのは、頑張り屋さんだったのですね。兄姉
埼玉 鶴ヶ島 高橋東亜夫
両親を早くに亡くし長兄は学校退めて働きくれぬ
幼き日父母亡き後を兄姉は親に代わりて育てくれたり
評
ご両親を早くに亡くされ、育ての兄姉に感謝している作者。特に兄は自分の勉学を諦めて働いてくれたと。今、ご恩返しは出来ているのでしょうか?短歌
藤の香の広がる社に厳かに鈴の音響き巫女神楽舞う
(埼玉 深谷 小館かおる)
(埼玉 深谷 小館かおる)
樟脳の香り流れて制服の眩しすぎるや自転車の君
(茨城 取手 堤 智子)
(茨城 取手 堤 智子)
香り良き手作り品を頂くは庭の山椒醤油に浸る
(埼玉 青木 松本 敦子)
(埼玉 青木 松本 敦子)
白鷺の羽ばたきさざめく水面にも負けぬ早苗の力強さよ
(埼玉 さいたま南法人 本山 千絵)
(埼玉 さいたま南法人 本山 千絵)
亡き義母のピンクの芍薬三十年吾の庭にてもゆっくり揺れる
(茨城 取手 清水 正子)
(茨城 取手 清水 正子)
手術して三日目の身体苦しくて背中に当てる手今欲しいかな
(茨城 知手 小川 万代)
(茨城 知手 小川 万代)
山火事の白煙抑えし五月雨は人々の家に静かに降りぬ
(埼玉 鷹野 田上 広子)
(埼玉 鷹野 田上 広子)
母の日に感謝したくも母は居ず白カーネーション飾りて偲ぶ
(埼玉 前川 北澤小枝子)
(埼玉 前川 北澤小枝子)
母の日に子等に囲まれ亡き母も今日はまぶたの裏で微笑む
(茨城 牛久東 宮本 靖枝)
(茨城 牛久東 宮本 靖枝)
パスワードオンラインなどと増えてきて昭和生まれはため息をつく
(茨城 鹿嶋 大原 文枝)
(茨城 鹿嶋 大原 文枝)
駅階段ふと見上げればツバメの巣いつの間にやら子が三羽
(埼玉 さいたま南法人 島村 昭敏)
(埼玉 さいたま南法人 島村 昭敏)
花束をスマホで撮ろうと苦戦する母の手を取りシャッター押すなり
(茨城 大貫 田中 敏光)
(茨城 大貫 田中 敏光)
青々と伸びてく早苗に声かけて田植えになる日を心待ちする
(茨城 塙山 根目沢美津子)
(茨城 塙山 根目沢美津子)
連休の喧騒ニュースに遠き日の家族旅行が切なくよぎる
(茨城 田彦 山口不二子)
(茨城 田彦 山口不二子)
迷いつつ辿り着きたる花の里一面にそよぐミヤコワスレよ
(茨城 知手 六﨑かつ子)
(茨城 知手 六﨑かつ子)
暑すぎて寺院巡りは中止してモールにはしゃぐバンコクの午後
(埼玉 柿沼 岩上 享子)
(埼玉 柿沼 岩上 享子)
竹の子が土盛り上げる春が来た背くらべして風と遊べり
(埼玉 鶴ヶ島 竹内 信幸)
(埼玉 鶴ヶ島 竹内 信幸)
四人部屋見知らぬ人と語り合い病歴違えど笑顔は同じ
(埼玉 久喜本町 関根貴世子)
(埼玉 久喜本町 関根貴世子)
少しずつカエルの声が鳴り響くそろそろ始まる田植えの季節
(埼玉 吉川旭 吉岡亜希子)
(埼玉 吉川旭 吉岡亜希子)
乾く喉雨の匂いに耳すませ声整えて六月へ立つ
(埼玉 さいたま南法人 廣川 直也)
(埼玉 さいたま南法人 廣川 直也)
風に舞い水面に浮かぶ花いかだ過ぎゆく春と共に流れる
(埼玉 所沢中央 渡部 睦子)
(埼玉 所沢中央 渡部 睦子)
雪かぶる安達太良山に太陽のやわき光に春を感じる
(茨城 大貫 瓊井田晴子)
(茨城 大貫 瓊井田晴子)
里桜今年も咲いてた一瞬を目に焼き付けて儚きいのち
(茨城 鹿嶋 永作 浩二)
(茨城 鹿嶋 永作 浩二)
もう止める連敗重ねる浦和レッズ連勝すればこりずに応援
(埼玉 蕨 松浦 徹)
(埼玉 蕨 松浦 徹)
前向きでいつも明るい母の背をいつか私も追いかけている
(埼玉 鶴ヶ島 平田 真里)
(埼玉 鶴ヶ島 平田 真里)
選をおえて
6月21日~22日に、南三陸町にて「しきなみ短歌会創立80周年記念 北海道・東北歌ごもり」に参加してきました。84首の歌を鑑賞し、講評と作歌の動機を聞き、それぞれの歌に作者の生活、家族の歴史があることを実感しました。まさに「個性の発揚」と「生活の浄化」が実践されていました。会場は感動にあふれ、短歌の素晴らしさを改めて確認できました。機会がありましたら、どうぞ参加されますように!