訃報
愛知 東 小林 明美
楽しくてしかたがないと微笑んだ人・世に尽くした君の訃報聞く
訃報受け「冗談きついよ噓だろう」満月の夜に鎮魂の雨
評
人の為、世の為に尽したご友人の訃報。作者はとまどい、信じられないという思いが強く、悲しみが胸の奥深く沈んでしまっている様ですね。2首目、作者の深い悲しみが雨を降らせたのでしょうか? 御友人のご冥福をお祈り申し上げます。○
静岡 焼津 瀧 克美
旅立ちの子を送る吾平静に明るく明るく「いってらっしゃい」
就職で遠くに行った子の部屋を掃除し我は急にさみしく
評
「子の旅立ち」。母である作者はいろいろな想いをもって見送られたことでしょう。でも、精一杯心を平静に持ち、明るく「いってらっしゃい」の門出の言葉を送られました。2首目、張りつめていた気持ちの糸がゆるんだのですね。巣立ったお子様の部屋を見て、急に寂しさがわいて来ました。母なればこそですね。初産
静岡 三島西 岩崎奈百合
初産に実家にもどる吾子のため和室の掃除に心は躍る
昼下がり小さき産着を畳み終え待ち遠しさを指折り数う
評
初産の為、実家である作者のもとに帰られる娘さんの為に、ウキウキしながら掃除をされている姿が目にうかびます。うれしいですね。2首目、初着を畳みながら、娘さんの帰って来られる日を待っていらっしゃる作者の幸福感が伝わって来ます。無事の安産をお祈り申し上げます。義父(ちち)を偲んで
岐阜 長森 今尾ハツ子
退職し俳句作りに励む義父(ちち)隠居部屋での姿懐かし
長年の勤めを果し義父(ちち)静か九十五年の人生全う
評
生前のお義父様の俳句を作っていらっしゃる姿を思い出されているのですね。今も「隠居部屋」は変わらず、その日のままなのでしょうね。2首目、95年の人生を全うされたお義父様への尊敬の念が強く伝わって来ます。家族に対しても、愛情深い方だったのでしょうね。ヘルメットと母
愛知 天白 森 ひと美
帽子つき自転車用のヘルメットかぶりて母は「兜」と笑う
ヘルメットかぶりこぎ行く自転車の風切る母は八十四歳
評
帽子付きのヘルメットを「兜」と思う、お母様の身を守る意識の高さに感服致しました。さすが昭和の日本の女性ですね。2首目、風を切り、さっそうと自転車に乗っていらっしゃるお母様の姿、とても素敵ですね。益々お元気で楽しい日々をお過ごしくださいませ。○
静岡 御殿場西 原 すみ子
沈丁花の香りてくれば畑興す富士の残雪農鳥(のうとり)に見ゆ
早苗田に鏡富士見ゆ水面(みなも)近く体かわしつつツバメとび交う
評
「沈丁花」や「農鳥」を見て、農作業を始める目安とされている作者の自然と共に生きている姿が、とても素晴らしいです。2首目、「早苗田に鏡富士」この表現が良いですね。とても素敵な光景です。そこに「ツバメ」が色を添えてくれたのですね。旬の空豆
静岡 三島西 岩田 京子
やわらかな白い布団に包まれる「空豆」剥いたら緑鮮やか
賜りし「空豆」・「海老」と炒めもの食卓の上春の色どり
評
「空豆」のさやの中の様子を「白い布団に包まれる」と表現された作者の感性がすてきです。皮をむいたら鮮やかな緑色の「空豆」の登場ですね。2首目、空豆の「緑」と海老の「赤」。どちらも「春の色どり」と感じた作者。食卓が、より一層はなやかになりましたね。短歌
任務終え天に召されて逝く君の白煙消えゆく彼岸の彼方へ
(静岡 裾野 浅井 雅代)
(静岡 裾野 浅井 雅代)
太い指「働き者の手ね」と褒められて今日も頑張るそのひと声に
(静岡 富士宮 佐野 良子)
(静岡 富士宮 佐野 良子)
亡き妻と毎朝毎夜語り合う生前よりも仲よき二人
(静岡 浜松中央 平出 茂樹)
(静岡 浜松中央 平出 茂樹)
学校の旅行のみやげと孫持参その心遣いを嬉しく頂く
(静岡 御殿場西 滝口香珠枝)
(静岡 御殿場西 滝口香珠枝)
「おいしいと食べてる顔が見たい」と言う息子の手作り食事に感謝
(静岡 御殿場西 皆川稚暎子)
(静岡 御殿場西 皆川稚暎子)
嫁からの手作りケーキ食す我心に沁みる今日は母の日
(静岡 浜松中央 橋本 静子)
(静岡 浜松中央 橋本 静子)
実家の義兄「明日より入院手術する」かすれた声に受話器を握る
(岐阜 池田 今村美千代)
(岐阜 池田 今村美千代)
泣きじゃくり化粧いやがる四歳の孫稚児行列立派に努める
(愛知 天白 竹内 恵子)
(愛知 天白 竹内 恵子)
たっぷりの雨と陽射しにグングンと幼なき苗の伸びゆくいのち
(岐阜 長良 篠田 知美)
(岐阜 長良 篠田 知美)
「どこか行く」「いってもいいよ」と休みの日気ままな出先で君とのパスタ
(静岡 富士宮 小塩 尚美)
(静岡 富士宮 小塩 尚美)
花見あとお猪口傾け乾杯す夫婦で楽し恒例の春
(愛知 春日井東 市野 賀子)
(愛知 春日井東 市野 賀子)
「おはよう」と微笑みかけてながめれば夫の笑顔は活力の元
(岐阜 長森 竹中 美恵)
(岐阜 長森 竹中 美恵)
筆先にオマジナイして墨をつけ心落ち着け半紙に向かう
(静岡 三島西 妹尾 友子)
(静岡 三島西 妹尾 友子)
新緑の香りを煮込むフキの色口に広がるほろ苦さ恋し
(静岡 磐田中央 大橋 礼子)
(静岡 磐田中央 大橋 礼子)
疲れない体づくりにスクワット取り入れ介護の仕事に活きる
(静岡 島田北 曽根 亜希)
(静岡 島田北 曽根 亜希)
「春みこし」夫も担いて「わっしょい」といい汗流し満悦の顔
(岐阜 大垣北 箕浦 和子)
(岐阜 大垣北 箕浦 和子)
門出の日準備整い点検をくりかえす孫は新社会人
(静岡 小山 中川八重子)
(静岡 小山 中川八重子)
踏まれても石の間に根をおろし花をさかせる強いスミレよ
(静岡 清水 鈴木 明美)
(静岡 清水 鈴木 明美)
木々緑鳥の歌声耳にして挨拶交わし目指す山頂
(岐阜 長森 境田 里美)
(岐阜 長森 境田 里美)
今までの大好物は痛風の引き金と知りしばしお休み
(愛知 天白 阿部 美奈)
(愛知 天白 阿部 美奈)
はじめての制服を着る三男は入園式で目立って見える
(愛知 安城 田畑 英志)
(愛知 安城 田畑 英志)
選をおえて
今月は、69名の皆様からの投稿、ありがとうございました。今月は、春の食材や地元のお祭り等々、多彩な題材で詠まれていて楽しく選をさせて頂きました。ありがとうございました。 その中で、「お稚児さん」の短歌にふと懐かしさをおぼえました。私自身、8歳の頃「稚児行列」に参加し、息子(現在50歳)も2歳の時に「お稚児さん」になりました。日本伝統の行事が令和の今も残っていることをとても嬉しく思います。 どうぞ暑さ対策を十分にされます様に。来月も皆様からの投稿、心よりお待ち申し上げております。