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9月 青泉集(宮崎・鹿児島) 石塚裕子 選

9月 青泉集(宮崎・鹿児島) 石塚裕子 選

逆境を糧に

鹿児島 龍郷 福崎 輝幸

あと一歩星に届かず涙飲む関取めざす息子の試練
再十両目指す息子の闘志湧く逆境糧に己を磨く
角界で努力する息子さんの姿を常に励まし、冷静沈着に見守る親の短歌が胸を打ちます。息子さんを信じる親心を強く感じ、きっと実を結ぶことと思わせていただきました。冷静な詠みぶりに好感。

瞑想

鹿児島 出水 田代 幸雄

岐路に立ち迷う心に夕暮れの雲におぼろな二日月色
紫電改八十有余の時超えて潮安らぎの水面に浮かび
1首目、結句に二日月を持って来られ、三日月より朧な線と色を「迷う心」と呼応させ、見事な詠みぶり。「紫電改」が引き上げられ、姿が海面に浮かぶ。時を超えた事柄の描写が胸を打ちます。

難すぎるスマホ

鹿児島 出水 金子スマ子

もう出来ん難し過ぎる頑張った簡単スマホなげ出す夫よ
頑張ってきっと出来るよユーチューブ好きな音楽いっぱい聞けるよ
スマホの扱いのあるあるですね。理解するのに時間が必要。若い人は理解ではなくそうなると思うだけらしい。身につまされますが、一字違いの奥様の応援です。きっと大丈夫でなげ出せないでしょうね。

父の酒と母

鹿児島 鹿屋寿 吉ケ別符啓子

父親は焼酎飲んで上機嫌母親不機嫌焼酎隠す
夜も更けて父がくだ巻く深(ふこ)追い酒母は隠せどその場所忘れ
題からしてユーモアを感じます。1首目、漢字が続きます。漢字が掛け合いのように思えておもしろい。2首目のルビ「ふこ」。深追い酒で地方の会話や情景、日常の生活ぶりが思われ、お母様の大らかさが良いです。

昔遊び

鹿児島 小松原 伊牟田多鶴子

トントンとかまぼこ板をまな板にレンゲの花でままごと遊び
竹の皮野いちご集めかけまわる懐しきかな里山の春
ままごとは楽しかったです。いろいろ工夫しましたね。思い出します。今の食事作りもままごとと思えば楽しいかも。野いちごを集める『赤毛のアン』を思い出したりしました。里山の春、素適な思い出いっぱいですね。

「もう歳だなぁ」

鹿児島 龍郷 安田 和子

膝痛みバスのステップ上れぬと知らぬ若者お尻押しくれ
バス乗りを手助けくれし若者は吾に笑みかけ「お気を付けて」と
だんだん身体が「あれっどうして」と動きが鈍ってくるのですね。でも、若者が助けてくれ、よい体験。きっと和子さんのお人柄が滲み出て、助けたいと何かが若者のやさしさに点火したのではと想像しました。笑みかける若者も素適。

お引越し

鹿児島 出水 正木久美子

思い出と荷物を全部整理して新たな家で紡ぐ青春
引越しの手伝い集う友達に支払うのならやれぬと言わる
新たな生活が始まり、期待に満ちていらっしゃる様子。良いですね。2首目、引越しの手伝いに来てくれた友人に「支払い(お礼のことでは)はいらぬ」と言われ、久美子さんの交友関係が素晴らしいことが分かります。これからも大切に。

吾心

鹿児島 真方 永濵 優子

毎日ねテレビ三昧これでいい疑問残るが仕方ないよね
愛犬の散歩行くのも面倒だでもねそれはね自分の為だ
きっと今まで働き続けてこられ、毎日テレビ三昧なのでは。疑問が残っても、今は良いとしましょう。犬の散歩もおもしろい捉え方です。万事良い様に、心のままに時折修正されて面白い詠みぶりになっています。

感謝

鹿児島 龍郷 山畑 倭江

たくさんの花束もらい五十五年の航海終えし夫感無量
労いの宴に集いし五十余名夫の言葉は感謝でいっぱい
ご主人様が長い間のお仕事を終えられ、労いの宴に友人がたくさん集ってくださいました。また、花なども届き、ご主人様のこれまでのお仕事ぶりを感じられたのでは。奥様のお力添えもあったればこそと思います。お互い、全てのことへの感謝なのですね。

短歌

職去ればあれもこれもとやる筈も今日は手つかずコーヒーを飲む
(宮崎 串間 武田真理子)
一人きりゆったり過ごす一日よ眺めるだけの買い物も良し
(宮崎 延岡北 多田 恵美)
背伸びして干せてた物が届かない「なんの負けるか」踏台がある
(鹿児島 南さつま 中井 可子)
タンポポの綿毛の中を亡き夫と散歩した道また歩きたい
(鹿児島 川内 中間チリ子)
東京で娘と合流コンサートワクワクドキドキ幸せ時間
(鹿児島 龍郷 中田さつき)
節句にて友の手作りあく巻きを食べる吾見て夫は横取りす
(鹿児島 西伊敷 倉尾つる代)
竹の皮開ければ嬉しあくまきにきな粉たっぷり味まったりと
(宮崎 小林 有木 将吾)
愛犬のためなら労力惜しまずに庭に作った芝のドッグラン
(宮崎 串間 中所 太郎)
はじめてに見つけた四つ葉のクローバーに大はしゃぎする吟行会よ
(鹿児島 川内 川尻いつ子)
亡き夫と共の散歩を思い出す変わりないのはクローバーの花
(鹿児島 川内 青﨑 広子)
入院に面会できず携帯で駐車場より夫の声聞く
(鹿児島 出水 三明ゆみ子)
眠れぬ夜想い巡りて短歌詠む答え出ぬまま朝を迎える
(鹿児島 長里 折田 玲子)
引き抜くも緑の美(は)しき雑草よ庭の手入れの進まぬ季節
(鹿児島 湯之里 久保まり子)
連休に今年ものびた葡萄の木家族で手入れ秋の楽しみ
(宮崎 志比田 佐々原幸子)
桑の実を両手いっぱいもぎ取って口に入れすぎ紅の唇
(鹿児島 南さつま 俵積田惠美子)
竹の子の穂先二センチみつけたり落葉のなかをやっと一本
(鹿児島 真方 柿元 建一)
「やさしいね」言われるたびにふと思うやさしくしたい人がいるだけ
(鹿児島 湯之里 板山小百合)
今生の住まいのつもりスリッパに入ってこの世見ている子猫
(宮崎 志比田 田代 義博)
月一度三三五五に集まりて心静かに筆運ぶ部屋
(鹿児島 龍郷 竹山 公子)
しきなみに皆の名見つけ嬉しくて歌ごもりでの思い出ともに
(鹿児島 東谷山 森 豊美)
いつの日かあんな時代もあったなと思えるように頑張る日々に
(宮崎 串間 中所 倫吉)
寝る時は今も冬物着用し年のせいかも毛布はずせず
(宮崎 延岡北 松田ひろみ)
夕暮に椋鳥の群れ電線にビュルビュル騒ぎ竹林に消ゆ
(宮崎 志比田 福島セツ子)
早苗田に落陽写しキラキラと水面に延びる黄金の道
(鹿児島 南さつま 長﨑惠津子)
文化祭踊る楽しさ生き生きと歳にもめげず足取り軽く
(鹿児島 武岡ハイランド 益田愛子)

選をおえて

今月の選歌、少し特徴のある短歌を選びました。『しきなみ』8月号の「しきなみの心」の「生き生きと歌う」で、自分の言葉で詠み、自由さも必要とありました。漢字が続いたり、地方の言葉使いなど、情景がそのことで良く分かるのであれば良いのではないかとしました。皆様も色々工夫されて、自由自在に表現されてください。お待ちしております。