「うるだぐなよ」
秋田 秋田北 加賀谷祐子
忙(せわ)しなく車に乗り込む吾の背に「うるだぐなよ」と夫の一声
「うるだぐな」近頃聞かぬ秋田弁「急ぐな」よりもしっくり馴染む
評
「うるだぐなよ」との秋田弁、初めて知りました。発音などのニュアンスもわかりませんが、ぬくもりの感じられる言葉ですね。1首目、心配してくれるご主人様の優しさ、愛情が伝わります。2首目、秋田弁の大切さを感じている下の句の思いが素敵です。最優秀賞
栃木 那須野ヶ原法人 若林 京子
しきなみの「最優秀賞」との知らせ受け取る我は半信半疑
賞状を手に取りやっと実感す「最優秀賞」を何度も見返す
評
しきなみ賞の「最優秀賞」の作品、『しきなみ』8月号で読ませていただきました。お父様の思い出の5首、どの歌も映像が浮かび、素晴らしいです。賞をいただいた喜びから、又、歌が生まれた2首ですね。心からおめでとうございます。退院後
群馬 高崎中央 伊藤 徳子
連日の点滴鍼の痕見れば見慣れた腕がやけに愛おし
久々に腹の底から合唱す肺治療後は生き返ったよう
評
鍼の痕が残っている痛々しさも伝わり、その腕を愛おしむお心の1首目。「肺治療」を終えて「腹の底から合唱」をしたという2首目。「退院後」の喜びが詠まれています。どうぞお身体を大切に日々を楽しまれてくださいませ。沖縄の旅
群馬 高崎中央 森田 真理
沖縄の海を見ながら悠々と術後の夫はナビに徹する
九名で今年も行けた森田家の令和八年沖縄の旅
評
1首目、「術後」のご主人様に感謝しながら、「沖縄の海」を見ている作者の幸せそうなお顔が浮かびます。2首目、「今年も行けた」との安堵の言葉がとても嬉しそうに感じました。「沖縄」を楽しんでいただけて、とても嬉しいです。森田家の「沖縄の旅」、ずっと続きますように。心から願っています。亡き義姉
茨城 塙山 深谷 明子
亡き義姉は得意な料理ふるまいて母の介護を労いくれき
一人居を淋しくないと謳歌して悔いなき生涯生き抜きし義姉
評
1首目、お母様の介護をされた作者に、お義姉様は感謝してくれたのですね。2首目、「悔いなき生涯」とお義姉様を敬愛して詠まれた作者。お2人の互いを思う優しさが美しく伝わりました。夫の代掻き
茨城 那珂 和田ヨシ子
この頃の主人はちょっとやり過ぎだ今日の代掻きいつもの五倍
暑い中一心不乱に代掻きす夫の顔と手まっ赤に焼ける
評
「代掻き」、私は見たことも体験したこともありませんが、大切な田植え前の農作業なのですね。働き者のご主人様を見つめながら心配しつつも、尊敬しているお心も伝わります。母の味
茨城 西原 笠木 暁美
風邪引きに体力落ちて食欲もなし母の作ったお粥なつかし
コトコトとお粥を作ってみたけれど母の味までとどかぬ夕べ
評
風邪などを引いてしまった時は、私も「母」が恋しくなります。お母様の「お粥」の味、忘れられない優しい思い出を詠まれています。お母様への幸せな思い、また詠まれてくださいませ。田植え今昔
茨城 田彦 座間美紀子
たちまちに植え付け終わる田植機のみごとな働きしばし見惚れる
腰かがめ後(あと)ずさりしつつ手植えした父母の姿が脳裏に浮かぶ
評
「田植え今昔」のお題で読まれた2首。田植機の働きと、手植えをされていたご両親の姿、2首とも田植えの美しさを感じている作者。私もその美しい情景を見つめてみたいです。自転車ヒルクライム大会
岩手 花巻 米倉 幹雄
大槌の自転車大会二年ぶり復活開催スタッフに感謝
ライバルに追い付け追い越せ今度こそいまだに青春歳はとれども
評
「ヒルクライム」について少し調べてみました。とても人気のあるジャンルなのですね。2年ぶりの開催を心から喜んでいる作者。「いまだに青春」と、明るさいっぱいです。感謝と喜びの溢れた楽しい2首です。看護師
茨城 飯島 鈴木美代子
小さくて幼き顔の看護師は可愛い声で「おはよ」と言いたり
イケメンの看護師肩に手を置いて「大丈夫だよ」と目を細めたり
評
医療従事者の方々は本当に優しいですね。若い看護師の可愛い声や「大丈夫だよ」の声に安らいだ思いを感じました。素敵な看護師の方々に出会えて幸せですね。短歌
仰向けで文字を書くのは難儀なり休んで書いて休んで書いて
(群馬 伊勢崎 小暮 玉江)
(群馬 伊勢崎 小暮 玉江)
「嫌いだよ」なんて言葉をかけられてさまよっていたあの時の吾
(茨城 那珂 井坂久美子)
(茨城 那珂 井坂久美子)
桜咲き庭の白梅満開で亡き妻歓声あげるだろうな
(岩手 花巻 佐藤 晄僖)
(岩手 花巻 佐藤 晄僖)
この雨量天の恵みだ鎮圧だぁ大槌町の山林火災
(岩手 宮古 山内 道治)
(岩手 宮古 山内 道治)
祈ることただ祈ること見えずともあなたに届くそう信じてる
(宮城 宮城法人 立石 浩一)
(宮城 宮城法人 立石 浩一)
朝食後夫と真剣オセロゲーム勝っても負けても貴重なひと時
(茨城 田彦 遠藤 洋子)
(茨城 田彦 遠藤 洋子)
香り立つ花びら集めてバラジャムをピンクそのまま浮き立つ心
(茨城 新荘 中村 史子)
(茨城 新荘 中村 史子)
亡き母が挿し木育てし木瓜(ぼけ)の木にこぼれる花の赤赤と咲く
(茨城 取手 山崎 嘉宏)
(茨城 取手 山崎 嘉宏)
天井を見上げ点滴受けており夢であってと幾度願うか
(群馬 伊勢崎 柿沼 陽子)
(群馬 伊勢崎 柿沼 陽子)
電話口「紹介したい人いるの」娘の声に鼓動が跳ねた
(宮城 宮城法人 日下 修)
(宮城 宮城法人 日下 修)
母の老い受け入れられぬ吾がいる寄り添う日々の未知なる生活
(茨城 知手 髙島三千代)
(茨城 知手 髙島三千代)
ケンケンと目覚ましとなる朝五時に我の畑をキジが散策
(茨城 西原 古川日佐子)
(茨城 西原 古川日佐子)
春来たと思えばすぐに立夏来て二つの季節の黄金週間
(岩手 盛岡 玉懸 隆一)
(岩手 盛岡 玉懸 隆一)
友妙ちゃんの打ち込みし書道我も又背中押されて頑張ると決める
(群馬 赤生田 仁木 俊子)
(群馬 赤生田 仁木 俊子)
高齢者集まりよれば通院の話でもちきり自慢のように
(茨城 知手 荒原 ふみ)
(茨城 知手 荒原 ふみ)
自慢の孫人生体験香港へラインの中で手を振りて発つ
(宮城 宮城法人 大久扶彌江)
(宮城 宮城法人 大久扶彌江)
難しき古典臨書に挑戦す息子の励まし嬉しく思う
(茨城 大貫 鬼澤日出子)
(茨城 大貫 鬼澤日出子)
物価高に石油依存の生活を戦争通し改めて知る
(群馬 伊勢崎 田部井初美)
(群馬 伊勢崎 田部井初美)
たわいなき日々の様子をラインにて離れ住む子と話す楽しみ
(茨城 新荘 河合 和子)
(茨城 新荘 河合 和子)
短歌誌に載ってるあなたと会うことができた幸せ東北歌ごもり
(宮城 仙台 大瀬木佳江)
(宮城 仙台 大瀬木佳江)
人生で始めてみたよシラネアオイ大輪の花群れて咲きおり
(福島 福島中央 厚美まち子)
(福島 福島中央 厚美まち子)
ホーホケキョ真似てみせたる口笛にウグイスも又鳴き返しくる
(岩手 盛岡 髙山 俊之)
(岩手 盛岡 髙山 俊之)
住む人も疎らになりたる故郷の古木に藤の紫にほふ
(岩手 盛岡 兼平 純子)
(岩手 盛岡 兼平 純子)
栗の花満開に咲き豊作か秋には熊かと不安が過(よぎ)る
(宮城 大崎 佐藤 誠祐)
(宮城 大崎 佐藤 誠祐)
初物の摘果メロンを塩漬けに食めばパリッパリ食欲そそる
(茨城 大貫 人見 裕子)
(茨城 大貫 人見 裕子)
できぬ事増えてくごとに愛しくて老いたる母よ今が一番
(茨城 那珂 植田 君江)
(茨城 那珂 植田 君江)
娘との伊勢への旅は春初めはやる気持ちで飛行機に乗る
(岩手 北上法人 佐々木尚子)
(岩手 北上法人 佐々木尚子)
孫達の努力の姿は姑に似る今更ながら御恩に気づく
(茨城 土浦中央 鶴川 文子)
(茨城 土浦中央 鶴川 文子)
道成寺絵巻ひろげて語りゆく住職の声名調子なり
(茨城 結城 原 貞夫)
(茨城 結城 原 貞夫)
手のこんだパッチワークのあと始末頭に浮かぶも手をつけられず
(茨城 牛久東 藤又マリ子)
(茨城 牛久東 藤又マリ子)
選をおえて
一席の歌を読んで、石川啄木の短歌「ふるさとの訛りなつかし停車場の人混みの中にそを聴きにゆく」を思いました。その地方の方言や訛りは、人々にとって大切な温もりのある言葉で、感情や情景まで深く込められているように思います。美しい日本語、素敵な方言を短歌に学びながら大事にしていきたいと思わせていただきました。今月もありがとうございました。