ひい孫と孫
広島 鷹野橋 清水 侑子
初対面じっと見つめるひい孫を抱けばふっくら匂いの甘し
産休の明けて混み合う通勤の電車に乗る孫元気で頑張れ
評
1首目、赤ちゃんの柔らかな肌やその匂いが伝わってきました。緊張しながらも幸せな瞬間だったと思います。早速仕事に戻られるお孫さんへのエールも優しくて良いですね甘夏
徳島 板野 一宮 恵子
甘夏を只管(ひたすら)むいている時にふと思い出す在りし日の母
甘夏を二個むいており夫の分来年もまた剥いていたいと
評
2首目に惹かれました。誰かのために何かをすることが出来るのは幸せです。作者の場合はご主人様に対してですが、「してあげている」と考えると、幸せは感じられないでしょう。コウノトリ
徳島 上八万 長江須美子
鳴門市の田んぼに巣づくりコウノトリ十年続けて産卵したり
六月の十五日朝巣立ちたりコウノトリのひな三羽そろって
評
コウノトリは絶滅危惧種だそうです。人々の努力でようやく個体数が増えてきつつあるようです。作者はそうした背景をご存じで、巣立った雛を温かく見守っています。四月
香川 松島 浅田 和美
「外します」黄色のカバーにお礼言う今日から孫は無事二年生
なめくじの研究者へのインタビュー興味津々ボリュームあげる
評
「なめくじの研究者」が面白かったです。そんな研究をしている人がいるのかと、作者と同様に興味がわきました。調べた所、環境問題や医療等への応用も期待できるようです。曾孫誕生
高知 高須 中嶋三千代
待ち侘びた曾孫誕生ガラス越し百面相を飽かず眺むる
手も足も一月(ひとつき)見ぬ間にぷっくりと曾孫は男(お)の子(こ)名前は啓人(けいと)
評
この「百面相」は見飽きないでしょうね。曾孫さんの誕生記念に名前を詠みこんだ素晴らしい作品です。生まれた時とひと月経ってからと成長が良くわかります。○
岡山 児島 山本 満子
幼き日友と泳ぎし富田(とだ)川はあの日のままに水は流れる
父母兄の声ききたくて来し墓に池の蛙の鳴きはじめたり
評
歳を重ねるほどに、変わらないものを恋しく思うようです。蛙の鳴き声は何かを暗示しているようです。亡き人たちの声は聴けたでしょうか。短歌
ひい孫を集合場所に送りつつ五分の道程色々話す
(広島 十日市 大畠 一美)
(広島 十日市 大畠 一美)
老害といわれたくない歳になり誕生日独りラーメンすする
(香川 松島 上廣 鷹雄)
(香川 松島 上廣 鷹雄)
東京で卒業生に囲まれて酌み交わす酒心に沁みる
(徳島 上八万 松前 義明)
(徳島 上八万 松前 義明)
「ただいま」と夫の写真に声かけて待ち遠しいな退院の日よ
(香川 三豊 森 郁恵)
(香川 三豊 森 郁恵)
カランコエ赤桃黄色の小花咲き部屋も心も明るく照らす
(広島 三篠 佐々木博子)
(広島 三篠 佐々木博子)
水田は田植えシーズン迎えおり夏に向かって季節は走る
(山口 錦見 野口 省三)
(山口 錦見 野口 省三)
吾の腕にギュッと掴まり義母(はは)は言う「ここにおってね行かないでね」と
(香川 松島 浮田 民惠)
(香川 松島 浮田 民惠)
五十年余ぬくもりつたう置時計祖父にいつも見守られおり
(広島 三篠 石森久実子)
(広島 三篠 石森久実子)
新緑のもみじゆるがす青あらし枝をしならせ渦まくごとし
(岡山 児島 谷本 綾子)
(岡山 児島 谷本 綾子)
さわやかな朝の空気を吸いこめば良き日にせんと力湧きくる
(岡山 児島 平尾 誠子)
(岡山 児島 平尾 誠子)
近所より初もの竹の子頂いて夫のよろこぶ筍ご飯
(徳島 渭東 政平 千枝)
(徳島 渭東 政平 千枝)
頂きし異なる品種のあじさいを挿し木で増やしみごとに咲けり
(鳥取 境港 足立 君子)
(鳥取 境港 足立 君子)
千人の歓声わきてマンドリン部ピアニッシモの奥深き音よ
(香川 松島 山路 静江)
(香川 松島 山路 静江)
難解な高校二年の数学を教えてと吾子冷や汗隠す
(香川 三豊 山地 智子)
(香川 三豊 山地 智子)
隣家の庭から嫁入りしたるらし師走の庭に水仙群れ咲く
(山口 山の田 中園 洋子)
(山口 山の田 中園 洋子)
「動けない」父から電話SOS近くにいるから助けになれる
(愛媛 松山 門脇 綾)
(愛媛 松山 門脇 綾)
歌友は白ユリの咲く庭を愛で夏の盛りを星となりたり
(山口 山の田 山本 都)
(山口 山の田 山本 都)
夫は待つ鮎の解禁もうすぐと芝を刈りつつ体力づくり
(徳島 上八万 篠原 絹重)
(徳島 上八万 篠原 絹重)
吟行会小雨そぼ降る中国道バスはひたすら六日市温泉へ
(広島 鷹野橋 横田 征子)
(広島 鷹野橋 横田 征子)
病い得て自由にならぬこの身体息子の励まし良薬に勝る
(鳥取 境港 加治佐正信)
(鳥取 境港 加治佐正信)
選をおえて
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」、これは鴨長明の『方丈記』の有名な冒頭の文章です。同じように見えても、よく見ると違う。この世の中はみんな、同じように見えても常に変化していくものである、といった意味です。こうした心境で物事を見ていると、いつもと違った気づきがあると思います。困難な状況もいつまでも続くものではありません。短歌に詠みつつ、心境を高めて参りましょう。