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9月 白光集(東京・千葉) 西郡美代子 選

9月 白光集(東京・千葉) 西郡美代子 選

夫の手

米国 南カリフォルニア 梅本 和子

夫の手がそっと吾の手に触れる時平素見せない優しさの見ゆ
夫の手に支えられつつ散歩する心安らぐこの一時は
日頃の夫と違う心の通う優しさとあたたかさがチラチラリ。安心と幸せな2人の散歩です。

東京 倫研 小林 宜子

帰り際「また来てね」と手振る母よ施設を後に胸熱くなる
持参せしプリンを母は「美味しい」とひと口ひと口残さず食べる
帰り際のお母様の言葉としぐさにせつなく後髪ひかれます。大好きなプリンをさもおいしそうに頂く母の姿が可愛くていとしさがつのります。母子の絆たっぷりです。

幼子

東京 東京高砂 岡田 伊セ

幼子はマスク姿の私みて笑顔を見せて手をふるなり
少しでもやさしく見ゆる目となるか言葉にせずもわかる喜び
幼子との見えない絆の強さがあります。どんな恰好でもすぐわかる子供の目の鋭さ。日頃の愛情が窺えます。

初音

東京 京葉 川名 節子

晴天の笠森山から聞こえくる巣立ちの初音か鶯の声
納骨の線香の煙流れゆき巣立ちの初音か鶯の鳴く
巣立ちの鶯の初鳴きと、去り逝きし者との対比を閑かに美しく詠まれました。

稲村ヶ崎

東京 吾嬬 松村富美子

食べかけのサンドイッチが空を飛ぶトンビが持ち去る稲村ヶ崎
指先に小さな傷を残されて飛び去るトンビとサンドイッチ見上ぐ
こんなことがあるのですね。トンビにサンドイッチをさらわれ、一瞬の出来事に唖然とし、残念。こまやかに楽しく表現されました。

東京 大岡山 岩田 和子

自転車と老いを友とすこの頃は漕ぐも「よいしょ」が仲間となりぬ
新緑の生れて木下のやさしさよ早も日差しは夏日の如し
老いの現れか。何をするにも、「よいしょ」のかけ声が必要となりました。新緑の木陰でひと休み、どれどれ「よいしょ」と立ち上れ。力の入る言霊でしょうか。「よいしょ」。

東京 倫研 吉澤綾告子

入院を拒みし夫は点滴と朝昼晩の薬頼りに
重症の肺炎ですと告げらるも通院選びし夫の胸内
病む夫の胸中が解っているのは妻だから。言葉に出さずとも、愛する夫のことよく解ります。

御岳山

東京 王子神谷 長谷川恵子

御岳山八十路の春に一人行く汗ばむ肌にそよ風うれし
千年のけやきの音が聞こえくる御岳の山の歴史にふれて
霊峰御岳山へ八十路の一人旅。その歴史と自然の雄大さに心ひかれます。春風心地よし。すごいです。

米国 南カリフォルニア 杉野 和子

風生れて千のジャカランダ千の揺れ花の散り敷く木下(こした)を通る
春の陽に白木蓮は咲き始む青空に向けふわり浮きたつ
春風が強く吹き、花びらを散らし、白木蓮の青空とのコラボ。春の様子が伝わります。

サッカー中継

東京 上目黒 杉野 剛

泣きながら『君が代』歌う森保さんこの老兵もぜひにお供を
オランダ人はとにかくデカいっス便器もと説く本田さん面白すぎっス
サッカーは残念でしたが、応援お疲れ様でした。一生懸命さがテレビの画面より伝わりましたね。又、解説も面白く、楽しめました。2首目、本田さんの語尾がお茶目で、上手に歌に取り込みました。

短歌

母の日に形見の指輪はめてみる翠キラキラ笑む母の顕つ
(東京 鹿本 工藤由美子)
「動けない」震える妻の手を握り一歩出るまでじっと待ちおり
(千葉 やわた 奥山 實)
散歩から夫は帰るなり嬉しそに短歌が出来たと書きとめるなり
(東京 王子神谷 鈴木 和子)
白木槿雨に打たれつなお凜と今日一日の命尽きゆく
(東京 倫研 稲田 博己)
朝霧にハッカの香りツンとして足裏にプチプチユーカリの実は
(米国 南カリフォルニア 草野 律子)
草花の四季の感知はたしかなり時たがえずに見事に咲きぬ
(東京 東日暮里 嶋田喜久枝)
九十五歳頭脳明晰マージャンデビュー母はアイドル頓智(とんち)効かせる
(東京 糀谷 黒木 廣子)
難病になりてしみじみ味わうは生命の力の不思議さ数多
(東京 小岩東 水谷文美子)
富士研の創始者セミナー参加者の不思議な出会いに心ふるえる
(東京 平和台 樋田 信子)
ギィーギィーとするどき声に見上げれば雉子が空飛ぶ一直線を
(東京 大森 水谷ゆめ子)
新緑の間から錦玉ファファとポプラ花散る雪花舞うごと
(東京 月光 長谷川とみこ)
緑道をペダル漕ぎ行く前籠に五月五日の葉菖蒲一束
(東京 東砂 田中 陽子)
「不二家」にて「百歳を祝う人が居ます」との放送に店内拍手
(東京 烏山 川澄 久野)
クローゼットのうもれた生地で作りたり風になびいて素適なのれん
(千葉 勝田台 芹田 慶子)
ぬか漬けのナスのいい色見詰めつつ夫は頬張る朝のひととき
(千葉 真間 矢口寿女子)
今風のメカに着いては行けないとあきらめながらも研修受ける
(千葉 郡本 清水はつゑ)
朝の四時起きて観戦大相撲ここはブラジル時差十二時間
(ブラジル サンパウロ 須郷 昭代)
御近所の友ら三人カラオケの仲間結成「おせんべいず」と
(千葉 江原台 西山 輝子)
老の身は心しくしく痛みつつ過去振りかえり侘しさ募る
(東京 立石 永田実恵子)
ドクダミは異臭なれども美しき花言葉持つ「白い追憶」
(千葉 郡本 石渡貫一郎)
次々と焼きたて回る焼肉の香ばしきにおい庭一杯に
(東京 京葉 山崎 市子)
五月晴れ鳴く音麗し郭公の姿求めて蒼天仰ぐ
(東京 武蔵小山 金子 勝子)
父の日に届きしブルーのティーシャツの洗練されしデザインのよし
(東京 錦糸町 野田 國光)
「ミューザ」にてパイプオルガンコンサートまなこ閉じればウィーンへ飛ぶ
(東京 月光 尾崎喜美江)
天に伸びるサグラダ・ファミリアの頂きに白く巨大な十字架完成
(東京 南大塚 木田 玉枝)
何もかも忘れて一日酔いしれるショパンをたどるピアノ演奏
(東京 大岡山 斎藤ふみ子)
バス旅行高齢つどい秩父路へ互助会のごと助け合いつつ
(東京 要町 関口 洋子)
春野菜一つ一つがありがたしキャベツの一葉大事に味わう
(千葉 真間 原澤 暁子)
風吹けば山法師の花ゆれて白き姿に庭を満たせり
(東京 烏山 大喜多優子)

選をおえて

皆様方の力作をありがとうございました。選をするにも心揺れました。選にもれた方達も気落ちなさいませぬ様に。多くの方が、楷書ではっきりと書いて頂き感謝です。ところで、子供達と作歌のコラボなど如何でしょうか。世代間交流が出来て楽しい作歌となり、発見もあるかもしれません。来月もお待ちいたしております。