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9月 白光集(中部・西部) 相澤郁子 選

9月 白光集(中部・西部) 相澤郁子 選

夫亡き四年目

鹿児島 長里 元吉まき子

好物の最期の西瓜をすすったらし側に居たかったな夫亡き四年目
三歳の孫のやんちゃな可愛さを見せたかったな夫亡き四年目
ご主人は好物の西瓜を食べた後に、最期を迎えられたのでしょうか。その場に居合せなかった作者に後悔が残っているようです。可愛い盛りのお孫さんにも会わせたかったですね。

清明祭

沖縄 与那原 宮城 朝子

清明祭小鳥さえずる墓前にはお酒と打紙(うちかび)ご馳走供える
清明祭門中墓(むんちゅうばか)は静かなり老木のでいご赤き花咲く
清明祭とは、旧暦3月の清明節に父系一族が揃い、先祖の墓参りをする行事のことだそうです。郷土色豊かな2首です。

鍛練

鹿児島 郡元 仁 光子

鍛練の手や足指のグーパーは日に三度認知脳トレ
ふくらはぎは第二の心臓感謝して体力能力愛しく励む
手や足の指運動、グーパーは認知症予防の脳トレ。ふくらはぎの運動も大切と、作者は健康維持に余念がありません。

ズッキーニの花

佐賀 日の出 田中コトミ

今朝開く雌花ばかりのズッキーニかぼちゃの雄花受粉してみたり
一つ咲くズッキーニ雌花受粉する強くやりすぎ折れてがっくり
ズッキーニへの受粉の様子や、失敗談を詠まれた2首。理科の実験を記録しているようで、楽しい2首です。

はつ夏

宮崎 国富 重永 一郎

山あひの小さき流れも宵訪へば金の瞬き出で交ふ螢の
朝まだきしじまに遠啼くほととぎす未だ微睡みに幽けき聲の
山間の清らかな水に育まれた螢の光の点滅を詠まれた1首目。明けやらぬ朝のまどろみの中で聞く、ほととぎすのかすかな声の2首目。はつ夏の透明感が美しいです。

青年

宮崎 志比田 山本美智子

こんな孫いたらいいのに宅配の青年の背に「気をつけてね」と
宅配の青年去りし玄関の先にほんのりシャボンの香り
宅配の青年のハツラツとした動作に、清清しさを感じた作者。シャボンの香りを残して去って行きました。

要介護(一)の夫

熊本 北の丸 木下美和子

片足を上げてズボン懸命に穿いてる夫を側で見つめる
昨日まで出来てた事もやれなくて口惜しがる夫によりそい手伝う
加齢により、動作が緩慢になられたご主人は、日に日に出来ないことが多くなり、いらだつようになりました。そんな姿に寄り添い、時に手助けをする作者です。

「ひたすらに生きる」

兵庫 長田 岡元 明美

九十年命あらたに初春にただひたすらに頭を下げぬ
いつの日か夫いる里に行ける時どんなおみやげ想いて生きる
新年を迎えて、作者は大いなる存在に感謝の思いを捧げられました。そして、次の世でご主人と会われた時には、どんなお土産話をするかと思案中です。これからもお土産話が増えて行くことでしょう。

コルセット付け初散歩

沖縄 嘉手納 上地 洋子

背骨折れコルセット付け初散歩頬を撫でゆく風薫る朝
風そよぐ花々揺れる散歩道坂道ゆっくり家路は近し
コルセットを巻いての生活は、時に不具合もおありでしょうが、作者は風薫る季節に歩ける幸せを楽しげに歌っておられます。豊かな人生ですね。

福岡 草木 戒能 文子

孫二人に「やっと解禁」自転車を厳しくやさしい夫は教官
子や孫と粽と饅頭手作りし節句を祝う菖蒲の鉢巻
幼い2人のお孫さんに、自転車に乗れるよう特訓するご主人を「厳しくやさしい教官」と見守る作者。大切な思い出になりそうですね。

しみ

熊本 平井 井上 泰秋

知らぬ間に赤味の「しみ」が手の甲に隠せぬ歳の現れなのか
親父にも確かに有った手の甲に我れも同じの「しみ」の現わる
加齢と共に、誰しもシワやシミが出て来ます。作者は、かつてのお父様のシミの手を思い出されました。お父様の年齢に近づいたのでしょうか。

短歌

微笑みて名刺を呉るる孫見れば五月の空より清々しくて
(兵庫 明清 藤木 淑子)
風薫る里の緑に見送られ父は早朝ひとり逝きたり
(熊本 北の丸 松田 純子)
吾難聴夫は言葉が上手く出ぬぶつかりながらも笑って暮らす
(熊本 松橋 米原 享子)
今朝は二羽並びて餌を待つ子雀よ鳴き声たかくせわしさの増す
(大分 横瀬 岩田タツ子)
目の前に突然現るモンキアゲハ母の化身か春の墓参に
(広島 三篠 岡 令子)
透明の風が時にはさみどりに色づきて見ゆ青もみじの下
(兵庫 明石東 佐藤 泰子)
不覚にも脳梗塞にやられしが手足の不自由最悪逃れぬ
(大阪 高槻 大橋 秀文)
花を愛で木々のそよぎに癒されてこれが平和というものなのか
(佐賀 与賀町 梶原千代子)
庭草をせっせと抜けど成長のあまりに早く追わるる日々よ
(福岡 鞍手北 永江ミサ子)
頑張った自分に花丸つけたいな仕事はまだまだ山ほどあるけど
(佐賀 与賀町 堤 加奈子)
電話すら出来なくなった母からの着信あれど電話は切れる
(京都 鳳凰 大谷津江子)
履きやすい靴下送りくれるとう父の日前に嫁からメール
(徳島 上八万 田村香代子)
次世代に繋ぐ工場の屋根工事暑さ対策にも貢献す
(香川 松島 岡田 義弘)
リズミカルな葉刈りの音の小気味良さ庭師の枝のみごとな出来映え
(兵庫 川西 岡 チエ子)
レストラン注文するもタブレット運んでくるは賢いロボット
(熊本 松橋 吉永 峰子)
「美味しいね」友と作りしマドレーヌ夫の好物笑顔のひと時
(福岡 鞍手北 沖村 雅子)
退院の予定決まりて子供らにラインで連絡今日は母の日
(宮崎 国富 岩切 幸子)
祝日に国旗を揚げる慣習のほとんど消えたり今日昭和の日
(佐賀 日の出 古川 弘子)
台風で二十七年目やっとついたマンゴーの実は揺さぶられ落つ
(沖縄 屋宜原 松原 稲子)
ひさしぶり床屋で髭剃り男前夫の姿にうっとり見惚れる
(大分 大分中央 帶刀 幸子)
台風で避難したのかカマキリはゆれてる枝にじっと止まりぬ
(沖縄 下地 野原 和代)
渋滞の交差点で道譲り笑顔の会釈心温もる
(熊本 瓦屋 才尾弘太郎)
月下美人純白冴えて香り満つ深夜ひらくを待つは楽しき
(大分 亀川 江藤 幸子)
ふるさとの父の庭より移植した鳴子百合の根芽吹くわが庭
(熊本 北の丸 宮嶋 節)
戦場は新兵器などの実験場戦禍の苦しみ伝わらぬのか
(京都 石原 西村 良子)
真夜中のテレビの音量に目が覚める父の行動我慢我慢と
(鳥取 境港 村上美津枝)
姑はトイレ介助の弟に「すまないねえ」とたびたび侘びる
(鹿児島 小松原 井上 美和)
前庭のりゅうぜんかずらの花開く夫が手塩にかけた花なり
(鹿児島 小松原 後藤志津子)
母の日に一人居の吾に熱つあつのお好み下げて姪っ子来たる
(山口 山の田 田代惠津子)
フラダンスピンクのドレスに年忘れ皆と踊る拍手も力
(山口 山の田 石田 律子)
母の日に近くに住みし娘くる妹弟分のお祝い持ちて
(熊本 北の丸 濱岡 絹子)
熊本の地震復興十年を空より祝う「ブルーインパルス」
(熊本 水前寺 橋本多實子)
山笑う樫の新芽が幾重にも稜線覆いて山全体を
(宮崎 延岡北 河野 松治)
吾が夫は拙い吾れに寄り添いて六十五年を支えくれたり
(佐賀 与賀町 立花 壽子)
膝手術三日寝たままもどかしき友より写メの紫陽花届く
(徳島 渭東 中野 敬子)
タイガースが若隆景が勝ちし時「ほら拍手して」と夫に催促
(大阪 東大阪市中央 吉田 泰子)
水張田に大空映す田園は大地にゆうゆう雲を浮べる
(京都 鳳凰 南 るり江)
初夏の風歓ぶ夫の愛おしく車椅子止め背(せな)を抱きしむ
(大分 臼杵中央区 古賀 艶子)
真っ直ぐに生きよと竹に教えられまずは姿勢と心を正す
(岡山 児島 山田 尚子)
黎明の山すれすれに浮かびたるか細き月の鋭き光
(兵庫 北条 長田 達子)

選をおえて

令和9年度より、私達の投稿歌はスマホで見られるようになりました。戸惑うこともありますが、いつでも手元のスマホで見ることができるので便利です。大いに活用して楽しみましょう。