RINCOM

9月 白光集(東部・東海) 仁戸共代 選

9月 白光集(東部・東海) 仁戸共代 選

デジタル入力

愛知 野田 稲生 満子

初めてのデジタル入力体験す「ハイそこ押して」に指の固まる
八十路かと思える隣人躊躇なくスマホの画面スルスルと変え
デジタル創生に向けた説明会では、詳しく手順を教えてくれます。慣れないことはドキドキしますね。友人はスマホの扱いが上手で感心されました。

洋裁

神奈川 南足柄 町田 聖子

若き頃デザイン凝りし服求め型紙欲しさにすべてを解(ほど)く
年重ねきちんと感のありながら着心地楽な服縫製す
気に入ったデザインの服を再現しようと分解して型紙を作っていた作者。好奇心と情熱を持ち、作業されました。素敵な服を作りましたね。

老いの御茶会

埼玉 寿 押田チヨ子

ふりそそぐ光に紅を増す桜賑わう庭に老いのお茶会
箏曲の静かなしらべ奏でればひとり一人と歌いてくるる
優雅な野点の雰囲気が伝わります。お琴の奏でる音色につられて、一人また一人と歌を口ずさみました。

遠き日

神奈川 相模原みなみ 兼田 なか

啄木をまねて詠いし通学の友等如何にと思いは耽る
敗戦の乏しき時代一冊の『一握の砂』廻し読みたり
学生時代に触れた石川啄木の歌集は、友人達の間で回し読みされました。新鮮で心に響きましたね。今の短歌の学びに繋がっています。

吟行会

神奈川 渕野辺 安部ムツ子

新緑に帽子目深き媼らは歌詠み笑う春の吟行
卯の月に沼は温もり黒い蝌蚪(かと)尻尾ふりふり育ちゆくらし
皆さんで吟行会に出掛けられて、楽しい一日でした。温かく、話が弾みました。小さなオタマジャクシが泳ぐ姿は可愛いですね。

息子逝く

神奈川 平塚 兼松 恒子

何故に親より先に旅立ちぬ働き盛り五十五歳子は
開発の仕事に恵まれ吾子逝きぬお別れ会はチーム全員
辛い逆縁に慟哭されたこととお察し致します。職場でも頼りにされてご活躍だったのに悔やまれます。ご冥福をお祈りします。

借家

愛知 名古屋南 田中 訓江

受け継ぎし先祖の借家何回もメンテナンスして九十年に
終活に先祖の借家解体へ詫びと感謝の続く毎日
リフォームされるなど、何代か住まわれて来た家を大事にされている気持ちが伝わって来ます。いよいよ手放す時が来て、丁寧にお別れの手続きをされました。

母の日

埼玉 指扇 市川美江子

髪を染め頬紅つけていそいそと母の日の朝ちょっとおしゃれす
子等集う手作りケーキのティータイムに母の日祝う品をいただく
母の日にお子さん達と集まるので、心がワクワクします。身だしなみを整えてお洒落をし、楽しい一日でした。

褒章受章

埼玉 久喜本町 関根 佐平

陛下より藍綬褒章(らんじゅほうしょう)賜りぬ改め覚ゆ職の重みを
褒章は家族をはじめ数知れずお世話になった証とぞ知る
長年の功績を讃えられて叙勲の栄誉に輝きました。多くの人達に支えられたと、感謝の心が美しいです。おめでとうございます。

俄庭師

埼玉 深谷 田澤 正枝

連休に新芽の延びた生け垣を刈り込む息子たのもしく見ゆ
生け垣を刈り込む息子の後を追い切り枝集め共同作業
息子さんが生け垣をきれいに整えてくれました。切り落とされた枝葉の片付けをし、二人三脚でスムーズに終わり、出来栄えに満足ですね。

草取り

群馬 藤岡 堀 静江

五時からの草取り始め三十日雀ら応援鎌の手軽し
草取りはストレス消えてやめられぬエールくれるよに撫子ゆれる
草取りを毎日の日課として取り組んでいます。雀が傍に寄って来たり、花に癒やされたりして、雑念が消えて行きます。

山菜とり

新潟 表町 磯田 サヨ

茎炒め葉はテンプラに根はみそでウド一本は捨てるとこなし
夜明け待ち長ぐつはいて鎌を持つ山古志の春は山菜豊富
里山に春が来れば、山菜が芽を出して来ます。豊かな山の恵みは自然からの贈り物で、この時期ワクワクします。

短歌

寒椿刈り込み捗る老い夫の鋏の音はメロデーの如
(埼玉 鳩ヶ谷南 山田 禮子)
目の前に鴉ヒョコヒョコ餌さがし莢豌豆をさばく嘴
(愛知 野田 深谷美佐子)
旅チラシ眺めるだけの二人なり老々介護に諦め多し
(茨城 新荘 根子 清)
点滴の針外されて退院の朝から夫は満面の笑み
(茨城 大貫 田中 純子)
不自由な夫の目となり声をあげ朝刊を読みひと日はじまる
(茨城 牛久東 大坂 和子)
ラジオから島歌流れ三味の音に一人まどろむ春の夕暮
(愛知 安城 新城 昌子)
息ぎれと腰痛くなり休みつつ鍬を使いて一畝耕す
(静岡 小山 森本 昭男)
家に居てストレスたまり友人が助けてくれて買物に行く
(岐阜 長良 酒井 順子)
黒々と寺の鯱(しゃち)を影絵にし赤き太陽昇り始める
(埼玉 宮町 舞草 信子)
朝日射す厨に匂う豆御飯温い味噌汁感謝し頂く
(愛知 栄 後藤美代子)
春雨は田を潤して代掻きに蛙入り来て初鳴き聞こゆ
(埼玉 指扇 有賀 久己)
八歳と五歳の孫は軕(やま)奉芸「もっと見たい」と道路に正座
(岐阜 大垣北 澁谷みゆき)
名も知らぬ小さな花をつける草抜こか抜かぬか手を止めにけり
(岐阜 大垣北 古山 絢子)
楽しくて野菜作りに没頭す指折り数え十三種なり
(長野 佐久平 髙橋フサコ)
鯉のぼり強き風受け青空に泳ぐ力を我もほしかり
(長野 佐久平 上原はつえ)
認知症と理解しつつもコントロールできない吾を落ち着くまで待つ
(茨城 大貫 鬼沢 信子)
初孫は天に召されし十六年(いざよとせ)妹(いも)の顔立ちに面影残す
(愛知 野田 野村 保江)
大輪の紫のばらいただきぬ友丹精の香りただよう
(埼玉 領家 海老江浩子)
減反にみどり一色麦畑おさなき頃の麦踏み浮かぶ
(宮城 石巻 片岡 千代)
塗り椀に若き僧侶の手間かけた野菜のかずかず精進料理
(宮城 石巻 小野 順子)
母の日の花束抱けば気高き香四十年(よそとせ)忘れず息子に贈らるる
(茨城 牛久東 飯塚 文子)
嫁入りの母の丸帯バックにす絹の刺繍の鶴に見い入る
(神奈川 港北区 鈴木 雅子)
夕餉どき長時間なる停電に心和みぬ懐中電灯
(茨城 鹿嶋 関口喜美子)
「まっいっかあ」娘に教わる合言葉失敗続けど明るく過ごす
(埼玉 蕨 松浦美規子)
若きらに混りてドームの野球観戦『闘魂こめて』皆と歌えり
(埼玉 蕨 高橋智代子)
どこかしこ閃く言葉は見え隠れ心留めたか否かで宿る
(埼玉 北与野 石代 强)
「期限付き杖の力も借りましょう」医師は教える杖のつき方
(神奈川 青葉区 根本 孝子)
足利のフラワーパークへ行ける日を憧れ団地の藤棚見上ぐ
(神奈川 青葉区 佐々木さゆり)
春の日に潜りて川鵜魚とる波に呑れつつひたすら続く
(神奈川 鵠沼 八塚 誠子)
ひとりばえの苗三年目花が咲き調べてみたらジャーマンアイリス
(愛知 野田 澤 田鶴子)
春深き桜も散りて道まだら誰が掃くのか竹箒の跡
(愛知 野田 山下 維新)
寒風に星のかたまり鎮座して明日の天気の予報巡らす
(埼玉 指扇 杉本 満)
さやさやとトウモロコシは葉を鳴らし五月の風受けしっかり根付く
(群馬 赤生田 松村まつ江)
行列の蟻の如くに集まりてネモフィラ愛でる人々の群れ
(群馬 藤岡 山﨑百合子)
久々に軒を賑わす囀りにつばめの巣作り完成を待つ
(群馬 赤生田 内堀 法子)
真夜の空弓張り月のみ煌々と星々淡く微かに瞬く
(神奈川 鎌倉 佐藤 有子)

選をおえて

新しく昇格された方の詠草も加わり、新鮮な気持ちで読ませて頂きました。短歌に込められた多くの心情に圧倒されます。 漢詩作りを始めましたが、起承転結をつけるのが難しいです。子供向けの本に起承転結について、「起=肉を炒め、承=野菜を加え、転=塩を振り、結=醤油で仕上げる」とユーモラスに書いてあり、笑って肩の力が抜けました。