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9月 飛雲集(西東京・海外) 森井清美 選

9月 飛雲集(西東京・海外) 森井清美 選

バラ苑

東京 小金井 田中 俊六

何色のバラが好きかと聞く君に「樺色」と答えた学生の時
バラの香を顔を近づけ嗅ぐ君の頭を押した若き想いで
バラを愛でながら青春時代を回想する作者。「樺色」の表現がセピア色になりゆく思い出とマッチしていて、歌を魅力的にしています。

母を念う

東京 六郷 村越 健男

正直な心に生きよと口癖の無学の母の教えはベスト
八人の子を産み育てたる母八十歳見送る末子最終のはな
母の日に詠まれたのでしょうか。8人の子を育て、「正直な心に生きよ」と常に生き方を示された母に捧げるお歌になりました。

母の日

東京 要町 伊藤 治郎

祝い待つ居間に飾りし「カーネーション」寂しき母の日妻は入院
妻病みて娘と祝う母の日は居間には吾と「カーネーション」が
母の日にいつもいるはずの妻が入院。カーネーションと娘と共に妻の快癒を祈る心境でしょう。

アボカドの種

東京 糀谷 髙田美代子

アボカドの種より出でし根を植えて小さき芽出て嬉しき一日(ひとひ)
アボカドの小さな葉っぱ愛おしみ三年(みとせ)経ちたら二メートルの木
アボカドから発芽した根を植えて感動する作者。2メートルにも育てば、立派な観葉植物になります。とても楽しみですね。

菖蒲

東京 西八王子 長澤美惠子

軒先に菖蒲ともち草吊るしつつ邪気を払わん五月の朝に
菖蒲浮く湯船に香り立ち込めて無病を願う立夏の夕べ
菖蒲は邪気や疫病を祓うとされた5月の伝統的な行事。しかし、最近は殆ど見なくなりました。作者の丁寧な暮らしぶりが窺えます。

富士万葉植物園

東京 平和台 杉山 紀子

万葉の若葉もえたつ植物園心弾ませ歌碑めぐりゆく
春の池水面に映える黄菖蒲の影を破りて白鯉はねる
富士研の万葉植物園を散策された2首。歌碑めぐりが楽しそう。2首目、生き生きと詠まれています。

お医者さんごっこ

東京 倫研 勝又 一真

「お父さん患者さん役お願いね」薬に注射に手厚い看護
食卓のテーブルいつしか処置台に妻の作りし飯時迫る
お子さんとお医者さんごっこ遊びをする作者のほのぼのとした2首。いいお父さんです。

短歌

春雨に濡れるゴミの傍に首をすくめてカラス佇む
(東京 倫研 山下 幸平)
早苗田に映える青空風わたる真鯉緋鯉の元気に泳ぐ
(東京 小金井 三笠 玲子)
美保神社の巫女書く文字の美しさ御朱印帳を暫し眺む
(東京 南大塚 坂本さやか)
京王線今朝も満員「押さないで」「もう少し詰めて」と心で叫ぶ
(東京 烏山 東江佐登子)
大岡川ベネチア号で桜狩り岸辺で手をふる手をふり返し
(東京 六郷 今村 銈子)
石蕗(つわぶき)の皮を剥(む)く手は黒くなり炒め煮食して母懐かしむ
(東京 烏山 鶴田ゆり子)
「お父さん筍ご飯できました」小さな器にお鈴が響く
(東京 西八王子 正田 規子)
杖なしで家を飛び出す母を追い大丈夫よとその手を握る
(東京 町田法人 中村 薫)
母の日に遅くなって「ごめんなさい」と娘がくれたあんみつ二つ
(東京 平和台 小川 啓子)
山地から見下ろす先に梨の花雪の如くか感の極る
(東京 平和台 小澤 盛男)
まだ何かし残したことあるような薄暮(はくぼ)の公園ひとりのベンチ
(東京 大泉 植田きみ恵)
ゆっくりと四季の彩り味わえる隣の庭に感謝あるのみ
(東京 武蔵小山 小柳るみ子)
笹の枝二羽の小雀鳴きあいて楽しい会話に聞こえてきたの
(東京 女塚 鈴木 快枝)
幸せは日常にあり朝食前妻といつものハグをすること
(ブラジル サンパウロ 須郷 清孝)
真緑に日ごと色づく庭園の芝の朝露互いに光る
(東京 倫研 松本 真志)
夏の宵西の彼方に星ひとつ銀河の流れ今は昔に
(東京 六郷 仲地 宗博)
大木(たいぼく)の育ちし若葉ゆれ動く紺碧の空に語るがごとく
(東京 王子神谷 鈴木 忠治)
音もなく梅雨の走りが窓ぬらすテーブル片づけ気分を一新
(東京 大泉 弘津 盈子)
長年の丹精込めた五月薔薇壁一面に咲き誇るなり
(東京 大森 平林 陽子)
裸木が春を迎えて芽吹きだし森が圧巻の若葉で萌える
(東京 調布 尾辻 義和)

選をおえて

皆様、ご投稿有難うございました。楽しく選をさせて頂きました。今月は母の日に母を詠まれたお歌が多くありました。毎月、家族を詠んだ歌がたくさん寄せられます。私事ですが、夫と2人の家族も半世紀を経て20名の家族になりました。短歌を始めて20年、歌を読み返してみますと、その時々が鮮やかに蘇ります。これからも続く自分史、歌を詠み続けていきます。来月も楽しみにお待ちしています。