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9月 飛雲集(近畿) 井ノ上修二 選

9月 飛雲集(近畿) 井ノ上修二 選

別府温泉

大阪 松原 北野 佑汰

喜んで地獄を見に行く人がいて別府の街に活気が宿る
艶やかなネオンと湯気で出迎える別府の街の朝は淋しげ
別府温泉には、7つの温泉を巡る「地獄めぐり」があります。「地獄」を喜んで見に行く人たちが、別府の街に活気を与える、という視点がユニークですね。2首目、夜の街が賑やかな分、朝はひっそりと映るのでしょう。

スマホを置いてみないとね

京都 太秦 赤阪 文

SNS見るのをやめて歌を詠む言葉の遊び楽しんでみる
夕焼けの空がきれいと知ったのはスマホの中の小さな画面
スマホ片手に、LINE・Xなどを通じて、たくさんのつながりが出来る中で、静かにペンと紙を持ち、歌づくり。アナログな楽しみ方もいいですね。2首目、てのひらサイズのスマホの持つ魅力は、偉大ですね。

季節の変わり目

兵庫 明石東 大西 洋子

朝晩はまだまだ寒さが残るけどそろそろ寝具を春バージョンに
モコモコのふとんカバーを取りはずしシーツを変えれば綿がさわやか
寒さ脱出の心のモード切替えができて、寝具も春バージョンへの取替えができたのですね。2首目、冬のモコモコふとんカバーから、春の綿のシーツへの取替で、心も、肌触りも爽やかになりました。

義母の入所

兵庫 志んぐ 大内 厚子

特養に入所が決まり安堵するも義母の不安もピークに達せり
電話口同じ話のくり返し義母の不安をどう消せばいい
特養の入所で、家族の気持ちはひと安心ながら、お義母様の口から、表情から発せられる不安そうな様子を気にされる、優しさを感じます。2首目、「いつ、家に帰れるの」に始まり、いろいろとあるのですね。

デジタル創生

兵庫 明石東 芝本 絹子

スマホ持ち途方に暮れるも助け得てアプリ登録老いの挑戦
スマホ持ち令和の改革皆と行く新しき世に期待ふくらむ
途方に暮れながらも、挑戦される姿に、感服します。「老いの挑戦」に、並々ならぬ決意を感じます。2首目、老いも若きも、手を取り合って、「デジタル創生」の名の改革に前向きに進んでまいりましょう。

夫の声

兵庫 西神中央 小林 智子

玄関で夫は何度も「ただいま」と幼き頃に姑を呼ぶごと
ドアを開け学校帰りの子のように夫は探しぬ我の名を呼びて
「幼き頃に」「子のように」、呼んだり、探したりされるご主人を優しく包み込んでおられる姿が、よく伝わってきます。家庭では、小さい時も、結婚しても、老いてきても、やはり、母、妻の存在は大きいのですね。

中三の娘

大阪 東淀川 岡田 幸織

「うざいけど感謝はしてる」とメッセージ中三娘の本音がちらり
ソフトテニス競り勝ち進むトーナメント「魔球」と褒められドヤ顔の娘
メッセージの中に、「感謝」の本音を感じ取る、前向きな向き合い方が素晴らしいと思います。2首目、「魔球」を褒められてドヤ顔の娘さんに負けずに、娘の親として、たまにはドヤ顔をしてみてくださいね。

夫の老い

京都 鳳凰 大槻 早苗

動かない動けない夫を軸にして椅子取りゲームごとき一日
床一面夫が動けばテッシュ散りパンにごはんに花びらのごと
家族が、順番、当番を決めているかのように、ご主人の世話をされているのですね。「椅子取りゲーム」のたとえが、面白いですね。2首目、ティッシュ、パンくず、ごはん粒が、「花びらのごと」ですから、実に明るい家庭ですね。

竹の子

石川 金沢 内山三由紀

朝掘りの竹の子重き赤子の様うぶ毛しっとり泥つきの皮
厚き皮むいた中から現れる淡黄色の竹の子愛し
「うぶ毛」「泥つきの皮」で、朝、掘ったばかりの新鮮な竹の子が、目に浮かんできます。2首目、皮をむいたら、淡黄色の竹の子の瑞々しいつややかな肌。見ていると、赤子の肌のようで、愛しくなるのでしょう。

微笑む花

京都 朱雀 福島 祥代

五月晴れ優しき光に映える花「近くにきて」と呼んでいるよう
寄りみれば楽しそうに咲くパンジーの可愛く笑い「我を見てよ」と
梅雨の合間の晴れ間ですから、花も一際輝いて見えるのですね。花の言葉が聞こえるくらい、花好きなのです。2首目、笑顔を投げかけ、笑顔が返ってくる。それを感じさせるのも、明るい心なのかも知れませんね。

病院コーラス

兵庫 三木 石田眞佐子

病院のロビーに響くピアノの音懐メロ唱歌時を忘れる
歌うこと誤嚥防ぐと集い来てシニアの笑顔弾むロビーに
病院のロビーで、ピアノの音を聴くだけで、心が癒される思いがします。懐メロや童謡は、その時代を思い出させてくれます。2首目、歌うことで、喉や周辺の筋肉を使い、それが飲み込む力を強めてくれるのですね。

短歌

パン作りなかなか深く面白し香りに包まれ心和みぬ
(大阪 寝屋川 日高 孝子)
武装して茂みに入りタラノキの棘と戦う四歳の春
(兵庫 寺家町 会田 陽子)
見るたびにやせ細りゆく母を見て遺影の父に励まし求む
(兵庫 尾上南 竹田 隆子)
愛媛路へ瀬戸の橋下凪の海どこへ行くのか行き交う船よ
(兵庫 魚橋 清家 裕美)
重い足引きずりながら春の道傍らで揺れる小さな木の実
(大阪 平野宮町 濱中 修)
雨の午後元気な声に窓あけるジャンケン遊びはずむ傘三つ
(大阪 八尾市北 増田佐和子)
詐欺メールひっかかるのはどんな人そんな自分が振り込みそうに
(兵庫 北条 森口智恵子)
「二時間も俺の前から離れない」夫と子猫の朝のひと時
(石川 金沢 納屋 成美)
親子ずれ自然番組ほのぼのとニュースになれば捕殺はじまる
(京都 太秦 石田 哲雄)
開花待ち咲いて嬉しや散り際の惜しまれゆくは人生のごと
(大阪 八尾市北 大森 洋子)
歌会で朗詠するは詩吟にて重み感じる貞教支苑
(京都 貞教 米岡トム子)
人ならぬものの吐息か花粉舞う老松の雄花(おばな)狂おしき祈り
(大阪 平野宮町 土屋 章)
ハイライトセブンスターにマルボーロ吸った銘柄思い出恋し
(滋賀 坂本 宮崎康之亮)
口ずさむリズムにのって「トントンと」包丁軽く夕餉の仕度
(大阪 松原 速水 郁子)
公園の隅一面に「白ツメ草」幸せ求め四ツ葉を探す
(和歌山 伏虎 貴志 静子)
幼子が嬉しそうに走りゆき鏡の様な水面ゆらす
(京都 貞教 山下 洋子)
じぃじぃに手取り足取り教え受け「総合遊具」の滑り棒トライ
(兵庫 明清 森本 智美)
砂時計すぎゆく「時間」を重ねつつもどせぬ「時」もまた重ねゆく
(兵庫 三木 魚住ちず子)
剪定する父の背中にさつき愛見事な満開真似など出来ぬ
(京都 はとりべ 中西 恵子)
高御位(たかみくら)の頂上到達ごほうびは大きな空と播磨灘見ゆ
(兵庫 播磨土山 岡治 美夏)
雨上がりより濃く見える里山に金色の麦鮮やかな色
(兵庫 三木 宮脇久美子)
紫の祝い帽子とちゃんちゃんこの恩師を囲み皆恵比寿さん
(兵庫 播磨土山 小島 礼子)
病み臥すやきっと治ると信じつつ長きトンネル山坂越える
(京都 石原 塩見都美子)
高原の涼風清し知らぬ間に裸足でうたた寝芝生の上に
(兵庫 西宮中央 鈴木たけ子)
五月晴れ孫らと並ぶユーエスジェー夢のひと時笑顔はじける
(大阪 中央 古芝 保治)
義父義母(ちちはは)は一緒にいると楽しくて安心感あり大好きな人
(大阪 東淀川 大濱ひかり)
見上げれば心安らぐ空の色浮かぶ雲にも青は負けない
(京都 貞教 根木貴美子)
母の日に花屋に並ぶ男子達恥ずかしそうに片手に一輪
(大阪 東淀川 小倉 和美)
一人旅一期一会の出会いあり会話弾むも名は知らぬまま
(大阪 中央 西本由利絵)
この味をひとりで知るは惜しきかなご飯の友に昆布ふりかけ
(兵庫 播磨土山 長谷河哲一)
歯を治し久々に行くレストラン友との食事は最高の味
(兵庫 西神中央 髙橋 秀美)
又一つ悲しいニュース流れてるテレビの画面真っすぐ見られず
(京都 貞教 平田 道子)
風薫るピンクむらさき藤の花たおやかに揺れ香り漂う
(京都 鳳凰 春日つや子)

選をおえて

今月も、皆さんの短歌を楽しく読ませていただき、選歌いたしました。4月に、気象庁が「酷暑日」を予報用語として、制定しました。「夏日」「真夏日」「猛暑日」「酷暑日」の暑さの段階がありますが、昭和、平成、令和の時代の歩みと共に、暑さが増してきた感じがします。昭和時代中頃までは、風鈴の音を聞きながら、蚊やりを焚いて、団扇を扇ぎながら涼んでいました。アナログな時代でした。デジタル時代で、アナログな一面を、探してみるのも楽しいかも知れませんね。