夫の死
岡山 岡山中央 岸本真知子
眠るように逝きし夫と夜を過ごし別れの朝に露草のあお
冬を越え桜の春を耐え忍び五月の空に旅出ちし夫
評
ご主人のお通夜のことを静かに詠まれ、お別れの翌朝の様子を「露草のあお」と締めくくりました。2首目には、冬から春に生死をかけられて、ついに5月の空に旅立たれたと、淡々と読まれていることに感動いたしました。リハビリ
広島 十日市 出原 延子
リハビリの屋外訓練外歩き慣れない地面に力のはいる
景色見て外気に触れてリハビリは効果てきめん足どり軽く
評
リハビリを屋外訓練で始められた喜びと、不安の入り交じった心境。そして、長い病室生活から外の景色を見ながら、歩行訓練のリハビリが効果抜群とよく2首にまとめられました。五月
兵庫 平荘 東田 利子
五月晴れだるまいっぱい勝尾寺杖を頼りに本堂参る
新緑の山々光りて車止め青空ながめて深呼吸する
評
五月晴れの良き日にドライブされ、休憩時には青空と緑を満喫している様子。また、ダルマで有名な勝尾寺を杖を頼りに参拝され、きっとゆったり堪能されたのでしょうか、よく伝わってきました。身心一如
岡山 岡山中央 平井 芳和
富士のもと心と体一つにと体の声に感覚すます
花を見て水にさわりて草をかむ五感全開自然と一つ
評
富士のもと、良い気がある所で体の声を聴く体験をされ、「五感全開自然と一つ」との感想を持てたことは素晴らしいですね。きっと作者しか分からない何かを体感されたのでしょうね。夫と
兵庫 西神中央 松本 千花
言い間違いばかりの夫につっ込めば思わず笑う夫婦漫才
健康の為にと夫婦でウォーキング大病乗り越え得られた時間
評
御夫婦の日常の一コマをよく詠まれています。捉え所のいい短歌ですね。仲良くご一緒に健康のため、ウォーキングをされているとのこと。どうぞお2人で末永くお続けください。母の日のプレゼント
兵庫 寺家町 中村 勝代
東京の息子一家より母の日の孫の手紙に成長を見る
花束に顔をうずめて香り嗅ぐ息子の優しさ部屋に漂う
評
東京の息子さん一家よりお孫さんの手紙と、花束を添えての母の日プレゼント、最高ですね。きっとお孫さんのちょっとした手紙も、うれしい限りですね。息子さんとの良き親子関係、伝わってきます。娘の成長
山口 錦見 米川 啓子
我が娘つかまり立ちから一人立ち身近で成長見れる喜び
指先を器用に使いつまんだりおもちゃを重ねて楽しむ娘
評
お嬢さんのつかまり立ちをする今が、一番楽しみな頃ですね。些細なことでもビックリさせられます。そんなことをメモして成長日記として短歌に詠まれたら、将来宝物になるでしょうね。端午の節句
兵庫 播磨土山 吉野ゆきえ
成人した子らしかおらねど菖蒲湯を沸かし端午の節句を祝う
子ら自立し独り居なれど柏もちをいただき祝う端午の節句
評
きっと毎年お子さんの節句の祝いをしっかりとされていらっしゃったのでしょうね。そんな昔の良き風習を独り居になってからでも、今日まで続けておられることに敬服いたします。喜寿
岡山 倉敷 田口 順子
洋裁を楽しむ吾に夫からの喜寿の祝いは新機能のミシン
糸通し・糸切り自動の新ミシン意欲いや増す喜寿の今から
評
ご主人から喜寿のお祝いで新型ミシンをプレゼントされたことにより、趣味の洋裁を益々意欲的に取り組まれています。「喜寿の今から」がスタートという、前向きな短歌にとても好感が持てます。ベスト編む
兵庫 三木 内山 育子
ベスト編むすき間時間に一目ずつゆっくりゆっくり五か月かけて
カギ針で冬のベスト編む寒空も背中ポカポカ孫と遊ぼう
評
ベストを編むことを趣味としてじっくり取り組み、5カ月かけておられるとのこと。完成したベストを着て、お孫さんと遊ぶのを楽しみにされているそうで、素敵な趣味ですね。短歌
夕闇の内海に遊ぶ月明かり影踏みしたきほどの満月
(岡山 児島 岩田 節子)
(岡山 児島 岩田 節子)
ささやかに粉をばはたき紅を引く朝のひと手間老いの楽しみ
(山口 山の田 田坂 民枝)
(山口 山の田 田坂 民枝)
月の出を東に向かい待つ時は静かな部屋に亡き夫と二人
(岡山 倉敷 岡本多賀子)
(岡山 倉敷 岡本多賀子)
回復期頑張りすぎず過ごす事モットーにして生き生き暮らす
(兵庫 寺家町 森井 茜)
(兵庫 寺家町 森井 茜)
子育てに疲れし娘に寄り添いて抱きしめたるやかつての吾を
(山口 錦見 泉原 節子)
(山口 錦見 泉原 節子)
母と行く日帰り温泉背を流し湯けむりの中溢れる笑顔
(兵庫 西神中央 山本 文恵)
(兵庫 西神中央 山本 文恵)
夕暮れの水辺に蛍乱れ舞い子等の燥ぎしあの日懐かし
(徳島 上八万 鎌田 政子)
(徳島 上八万 鎌田 政子)
花まつり寺の広間に展示会力作ばかりに話がはずむ
(兵庫 太子 船引セツ子)
(兵庫 太子 船引セツ子)
店をした頃配達などをしてくれて父の助けに涙こぼるる
(兵庫 泉 乾 幹子)
(兵庫 泉 乾 幹子)
夫亡き後息子がくれたメッセージ「長生きしろよ」に癒やされる日々
(兵庫 尾上南 宮宅喜久子)
(兵庫 尾上南 宮宅喜久子)
亡き夫の好んだ牛のすじ煮込み娘持ちくれ共に味わう
(兵庫 芦屋北 前田みゆき)
(兵庫 芦屋北 前田みゆき)
転倒し足の痛みに治療受け八十路になれば気を付けようと
(兵庫 芦屋北 三浦 幸子)
(兵庫 芦屋北 三浦 幸子)
街角の花屋に並ぶカーネーション亡母の想い今も変わらず
(兵庫 北条 松尾 月代)
(兵庫 北条 松尾 月代)
古希過ぎて習う編み物夢叶い糸と針との魔術に夢中
(徳島 渭東 三橋 明子)
(徳島 渭東 三橋 明子)
田植後の夜はカエルの大合唱喉をふるわせ第九のごとき
(広島 十日市 田辺 清子)
(広島 十日市 田辺 清子)
友逝きて残せし絵画はリビングにパリでの朝の描写寂しき
(愛媛 松山 松下さか江)
(愛媛 松山 松下さか江)
賜りし筍茹でてワクワクと天ぷら煮もの筍ご飯
(兵庫 長田 門野 攝津子)
(兵庫 長田 門野 攝津子)
世の中は今やデジタル何事も指一本のタッチで変わる
(兵庫 播磨土山 笠原 敦子)
(兵庫 播磨土山 笠原 敦子)
静寂の村のどこかで竹が鳴る廃線跡を夫と散策
(兵庫 西神中央 𡈽井満貴子)
(兵庫 西神中央 𡈽井満貴子)
風呂も沸き食事出来てる幸せをしみじみ語る孫新大生
(広島 十日市 吉宗八栄美)
(広島 十日市 吉宗八栄美)
義父購入エアコン付きのトラクター暑さに負けず快適農業
(兵庫 三木 福田 美苗)
(兵庫 三木 福田 美苗)
両瞼手術終りて目の前がぱあっと明るく感激をする
(広島 鷹野橋 濱岡佐和惠)
(広島 鷹野橋 濱岡佐和惠)
足上げて手をふりあげてただ歩く今日も続けて八十日目
(広島 国泰寺 久保 和美)
(広島 国泰寺 久保 和美)
初夏の日の法面染める金鶏菊まだ来ぬ夏を先に浴びおり
(岡山 岡山中央 井上 健)
(岡山 岡山中央 井上 健)
紅梅の香りただよう荒れ庭にメジロ達が元気にとびて
(高知 高須 桐島 功子)
(高知 高須 桐島 功子)
亡き父を思い浮かべて運ぶ菓子「きっとこれ好き」声まで聞こゆ
(兵庫 西神中央 佐藤 弥生)
(兵庫 西神中央 佐藤 弥生)
にこにこと主人見つけて走りよりじいじ抜いたと背くらべ勝つ
(兵庫 尾上南 市原みや子)
(兵庫 尾上南 市原みや子)
蛇口から飲めとばかりに出るジュースは濃いみかん味飲んでみたぜよ
(高知 高須 荻田 定子)
(高知 高須 荻田 定子)
アナログの我にはハードル高すぎてライブの予約息子に頼る
(兵庫 播磨土山 岡田 純代)
(兵庫 播磨土山 岡田 純代)
子や孫が一緒になりて祝いたり金婚式まで頑張ってねと
(山口 山の田 草薙美智子)
(山口 山の田 草薙美智子)
選をおえて
短歌は辛く悲しいことをそのまま記すと、読み手はさらに辛く悲しくなります。何か上を向いて前に一歩進もうとしている姿勢が伝わると、読み手には倍の感動を呼びます。今回も情景が目に浮かび、分かりやすく、余分な説明言葉もなく、作者の気持ちがよく伝わってくる、秀作が多くありました。そして、平凡な歌の中にも何か一つ、琴線に触れるものがありました。個性的な皆様の短歌の中から、毎月こうして学ばせてもらえることに、感謝で一杯です。感謝!