亡き母
沖縄 屋宜原 大城真紀子
亡き母のミシンの技が光る服袖をとおしたあの日を思う
亡き母がしまって忘れた命名紙五十六年経て今手の中に
評
洋服も命名紙も亡きお母様の手によるもの、大切な品々ですね。お母様との思い出に浸りながら、ご自分の人生をも振り返っておられることでしょう。母の青春
沖縄 読谷 國永るみ子
同居して今さらわかる母の好み昭和の歌謡青春の歌
歌番の「水谷豊」見る母の麻痺のある手がリズムを刻む
評
お母様の青春時代を垣間見られたようなお気持ちでしょうか。2首目、下の句の具体的な表現から、お母様のご機嫌な様子がよくわかります。姑(はは)
沖縄 玉城 大城 睦こ
毎日の同じ話を繰り返す笑顔の姑(はは)は吾にあまえる
同じ話を繰り返す姑(はは)逃げ出さずやさしく聴けば深き愛を知る
評
同じ話の繰り返しでも、お姑様にとっては「初めて話す」こと。お姑様を受け止め、寄り添っていらっしゃるからこそ、お姑様も信頼して甘えられるのでしょう。台風
沖縄 安謝 山川美枝子
台風といえばヒラヤーチー母の味昔なつかしにらたっぷりの
玄関のプランターなど中に入れ台風対策万事整う
評
「ヒラヤーチー」は小麦粉を水やだしで溶き、ニラやネギを混ぜて薄く焼く「平焼き」とのこと。台風の多い沖縄ならではのお歌2首。被害は無かったでしょうか。平和ガイド
沖縄 嘉手納 町田 順子
頼まれてガイド引き受け悲劇知る「チビチリガマ」われ伝え得るか
「チビチリ」の悲しき記憶子らにどう語るべきかと言葉探しぬ
評
戦争を知らない世代が、戦時中の悲劇を伝えていくことは、難しさもあるのでしょうが、決して風化させないために、大切なことだと考えさせられました。デジタル
沖縄 屋宜原 宮城 洋子
デジタルは便利だけれどシニアにはどうにもこうにもうまくいかない
スマホ見るいつもと違い真剣に取り組んでいるデジタル登録
評
戸惑いながらも「デジタル創生」に真剣に、前向きに取り組んでいらっしゃる様子を素直に詠まれました。お互いがんばりましょうね。デジタル
沖縄 玉城 外間 澄江
スマホ手にアプリ登録試みる時代の流れ感じつつ入力
クレジット初めて手にし試しにとスーパーで買い物出来て嬉しき
評
初めてクレジットカードを作り、買い物ができた喜び。「デジタル創生」のお陰とも言えますね。迷っているシニアの会員さんたちへの励ましとなりますように。夫
沖縄 西川 田福 榮子
台風時夫と二人のティータイムテレビ鑑賞ひととき癒す
食材の野菜をゴチャゴチャ入れすぎて「あっさり作れ」夫の一言
評
台風の時はご主人とくつろいでいらっしゃるという、その余裕に驚きです。2首目、明るく楽しいご夫婦の様子伝わりました。短歌
新月に願へば叶ふと聞きおれば迷わず祈る夫の回復
(沖縄 下地 伊志嶺博美)
(沖縄 下地 伊志嶺博美)
グラジオラス円をえがいて右左台風去ってくつろぐ様に
(沖縄 石嶺 外間 節子)
(沖縄 石嶺 外間 節子)
初めての摘果マンゴーレシピ見てジャムに漬け物おいしさ発見
(沖縄 石嶺 森田 幸子)
(沖縄 石嶺 森田 幸子)
年老いてしがらみ数多のり越えてゆったり生きたや短歌を友に
(沖縄 泡瀬 我喜屋ミツ子)
(沖縄 泡瀬 我喜屋ミツ子)
ツチイナゴ片足無くし縋りつく療養のため我が家に来たか
(沖縄 西川 上地 秋子)
(沖縄 西川 上地 秋子)
オレンジのハエマンサスは玄関へ花火の如くドカーンと咲く
(沖縄 城東 屋嘉千代子)
(沖縄 城東 屋嘉千代子)
歩くさえ厳しき義父は追悼の意を捧げたいと摩文仁の丘へ
(沖縄 普天間 仲村 和也)
(沖縄 普天間 仲村 和也)
老いてなお背すじ伸ばして落葉掃く媼の実践聞くのも楽し
(沖縄 仲井真 城間 早苗)
(沖縄 仲井真 城間 早苗)
懐かしいソーメンチャンプルヒラヤーチー家族で食べた台風メニュー
(沖縄 嘉手納 屋宜 澄江)
(沖縄 嘉手納 屋宜 澄江)
歌ごもり親がいるだけ幸せときづかせる歌目頭うるむ
(沖縄 普天間 佐藤 政治)
(沖縄 普天間 佐藤 政治)
誕生日施設の窓辺でおしゃれして紅さす姑(はは)は吾を待ちおり
(沖縄 玉城 親川美恵子)
(沖縄 玉城 親川美恵子)
居酒屋の蛍の光急かされて尽きぬ話題は道端会議
(沖縄 大道 比嘉 悦子)
(沖縄 大道 比嘉 悦子)
もっと早く台風対策しておけば蘭の花など開いたばかり
(沖縄 浅野浦 羽地 京子)
(沖縄 浅野浦 羽地 京子)
失語症夫の言葉は聞きとれず訴えているもどかしい顔
(沖縄 浅野浦 高良ミヨ子)
(沖縄 浅野浦 高良ミヨ子)
主(あるじ)なく実家じまいの古家には柱に記せし吾子の背丈が
(沖縄 泡瀬 古堅 広子)
(沖縄 泡瀬 古堅 広子)
カーディガン羽織れば風の匂い立つ友待つカフェへ足取り軽し
(沖縄 具志川 棚原キミ子)
(沖縄 具志川 棚原キミ子)
仲間らと笑い涙す歌ごもり学びいっぱい宝もの得て
(沖縄 泡瀬 比嘉 昌子)
(沖縄 泡瀬 比嘉 昌子)
梅雨の日は筆ごもりにて一日中半紙ちらばり墨の香のたつ
(沖縄 読谷 上地 正秀)
(沖縄 読谷 上地 正秀)
髪型がきまると孫はドヤ顔でスキップしつつ学校へ向かう
(沖縄 平良 吉原 幸子)
(沖縄 平良 吉原 幸子)
初鳴きのアカショウビンの声高く初夏の訪れ告げるかのよう
(沖縄 平良 知念 節子)
(沖縄 平良 知念 節子)
子供の日畑に集いてバーベキュー巣立つ日近き孫ら頼もし
(沖縄 真喜良 伊良部純子)
(沖縄 真喜良 伊良部純子)
動物の看護師コースを学ぶ子は初めての地に足踏み入れる
(沖縄 下地 下地智恵美)
(沖縄 下地 下地智恵美)
長崎は雨でも楽し運転手ツアーの客を明るくもてなす
(沖縄 久茂地 坂田 淳子)
(沖縄 久茂地 坂田 淳子)
孫来ればゴミのかさ増すいつもより袋の中の色もにぎやか
(沖縄 真玉橋 上原 規子)
(沖縄 真玉橋 上原 規子)
久々の夫と二人の外食も家と変わらず家族の話
(沖縄 真玉橋 島袋 彰子)
(沖縄 真玉橋 島袋 彰子)
選をおえて
飛雲集から昇格された皆様、おめでとうございます。今月は、「歌ごもり」「慰霊の日」「台風」のお歌が多く寄せられました。その中で、期せずして「母」「姑」を詠んだ作品が上位に並びました。いずれもほのぼのとした「絆」が感じられました。皆様の作品を拝見して、語順を変えればすっきりするのにとか、助詞一つ変えるだけでぐっと良くなるのに、と思うことがよくあります。ぜひ、何度も推敲して見直してくださいね。