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9月 みすまる集

9月 みすまる集

春のほがい

福岡 三橋 井口登美子

新緑の山々眺め墓参へと友人達とバスに揺られつ
恩師への春のほがい日墓参する今日まで生かされ感謝述べたり

花の寺

東京 浅草 小林由紀子

花の寺躑躅咲き満つ境内にいとこ五人でスナップやさし
バス下車で右足のももふくらはぎにひざにひび走り歩行困難に

大槌町の山火事

埼玉 指扇 當間 保子

燃え上がる厳(いか)し焔は赤々と大槌町の山舐めつくしたり
「こんなにも雨に感謝は初めて」と大槌町の人山火事に追われ

母のお焼

埼玉 吉川旭 近藤 髙雄

命日に母を偲びて焼き上げる漬物入りの昭和のお焼き
金がなく菓子など買えぬ時代でも最高なりき母のお焼きは

蝶の道

埼玉 青木 石塚 裕子

我が家の庭にも蝶の道あるや薔薇のアーチを揚羽は潜る
鉢植えの苺はいまだ色づかぬ今朝もバナナをヨーグルトに乗す

義母の形見

秋田 秋田北 三浦恵美子

亡き義母(はは)の形見の着物袖通すお召し付け下げ絞りの羽織
白き顔博多人形ほほえみて義母(はは)に面差し似たる形見よ

ブーゲンビリア

米国 南カリフォルニア 梅本 豊造

新しい枝に真っ赤な花咲かせ我に挨拶ブーゲンビリアは
「有り難う」ブーゲンビリアに声をかくふんわり香る春の風吹く

ジャカランダの花

米国 南カリフォルニア ホン 史子

咲き切りて土に休らう紫のおだやかなるよジャカランダの花
踏まれても気品を残す紫のジャカランダの花に背筋を伸ばす

「母の日」

米国 南カリフォルニア 松永 典子

「母の日」を前に娘の活ける花無言の背なゆ想い伝い来
遠く住む息子家族の寄せ書きに温きおもいをもらう「母の日」

オンシジューム

ブラジル サンパウロ 徳力 洋子

母の日に子に贈られしオンシジューム白き小花のあまたこぼれる
まだ五月季節はずれの寒波きてスマホの挨拶皆「寒いね」と

女の孫

東京 吾嬬 岩立 道子

満面の笑みで下校の女の孫は「三連休よ」とスキップを踏む
ばあちゃんの顔を描くとう女の孫は大きなシミを残さず書きぬ

ジャーマンアイリス

千葉 やわた 柳澤 久子

初花のジャーマンアイリス仏前に姑(はは)の命日ふじ色淡し
アイリスは苞に隠しぬ密やかに花序(かじょ)を抱きぬ双子の妹(いも)を

夫婦

東京 水元 今尾 松代

公園のベンチに夫と手の触れし半世紀前は罪悪感あり
五十年夫は卒寿に届きたり一心同体空気のごとく

ルーティン

千葉 江原台 堀 衛子

今朝も又夫の納豆をかきまわす朝餉の光景いつものルーティン
夫と共家事分担し助け合う八十路を越えて大事にすごさむ

我庭

兵庫 川西 今北修太郎

ひとしきり忙しく鳴きて飛び立ちぬ百舌鳥なきあとの庭の静けさ
不揃いの玉ねぎたちを吊しつつひとつひとつを愛おしく思う

広島 国泰寺 𠮷村美智子

毎朝におはようと言い握手した夫にも一度握ってほしい
長男の後姿に亡き夫の優しき面影瞼に浮かぶ

絵手紙楽し

兵庫 魚橋 大西 暁生

頼まれし絵手紙指導緊張す呼ばれし今はうれしや櫛寿
十二名それぞれ絵手紙書き上げし「才能あり」と眺め楽しむ

福岡 三橋 藤吉 龍子

桜咲き風のいたずら花は散り水面に浮かぶ花筏群
春になり花見花見と喜ぶも雨風強く葉桜なりぬ

野良猫

群馬 藤岡 新井きよ子

白とぶちの野良猫二匹庭隅に春の陽浴びて寝そべりており
偶に来る野良猫達を好まぬが自由な振無い見ぬふりをする

夜明け前

兵庫 芦屋北 藤本 邦子

しらじらと明け染めるころ目の醒める手足を伸ばし今日も生きよう
ゆうるりと日の暮れてゆく晩春の遅くなりたる夕餉の支度

茅乃舎(や)へ

鹿児島 田崎 日髙由美子

新緑の里山の中に茅葺きの趣のある大きな茅乃舎
箸置きに快気祝と記されて茅乃舎の味こころに沁みる

大分 臼杵中央区 多田 清子

締め切りの迫るも短歌の出来なくて空を見ながら模索している
夕空を北へ飛びゆく鳥の群れ家族だろうか思い広がる

六年四組

大分 臼杵中央区 赤迫三枝子

クラス替えなきまま小学卒業の揺籃ともにす絆ゆるがぬ
二十歳(はたち)より同級会を重ね来て今宵八十路の八人集ふ

孫の夢

熊本 あさぎり 和田 和子

将来の夢を語りし孫の顔穏やか瞳も輝きおりぬ
孫の夢初めて聞きて胸はずむ若さあふれる希望の星よ

カタクリの花

千葉 中沢 髙橋 祥子

住宅街ほんの少しの斜面にてカタクリ咲きて厚き保護受く
かたくりは小さいながらもユリの花お日様うけてピンと開花す

茨城 上水戸 大山 公子

強風のおかげか空を見上げれば吸い込まれそうな真青な色
目が覚めて台風一過空見ればはじめて見るよな強烈な青さ

夫逝きて一年

大阪 八尾市北 藤本 正与

紅白の花水木の花眺めてた夫の横顔見ずに花散る
夫逝きてあっという間に一年余今は聞こえず今朝は何かと

初夏

東京 湯島 大門 イク

さわやかな夏日の様な晴天に葉は広がりぬ二・三日の間(ま)に
いつの間に桜の木々は緑増し根元に黄色の山吹を見る

昭和時代

京都 太秦 泉 祥子

昭和時代百年過ぎて今令和その時生まれ我八十五歳
昭和の日だんだんうすれ行く時代思い出多く我らよき時

神木

京都 太秦 津中 和枝

境内の神木二本ムクノキは繁れる枝葉空かくしおり
車窓より富山平野のおちこちに麦秋迎える田のなつかしや

紫陽花

東京 倫研 宇都進一郎

紫陽花がひとつまたひとつ咲きはじめ庭一面に輝きわたる
ガレージのうしろの花壇であじさいが季節を得たりと美しくも咲けり

五月

東京 錦糸町 荒井 和恵

赤い花ツツジが春で夏サツキ季語は違えどどちらがどっち
連休は混むのが嫌で家テレビけれども映るは人混みばかり

ジャガイモ掘り

東京 金町 西村 幸子

ジャガイモ掘り投げた小芋が長靴に偶然入り孫に泣かれる
雨の中ジャガイモ掘りはぬかるんで新ジャガなのに泥まみれなり

老いを生きる

東京 末広 鈴木喜美恵

春雨のけぶる窓外眺めいる路肩のつつじ凜として在り
温暖の日日多かりしこの春は芽吹く草木に生気をもらう

母校の便り

東京 小金井 雨宮とよ子

覚えたての「初恋」の詩を諳じる杳き日思う母校の便り
満里ちゃんと「初恋」の詩を吟じあい恋に恋せし二人の放課後

引っ越しに

東京 西東京 井村 充子

引っ越しを手伝いに来て娘達梱包鮮やか次々収まる
七年半住居しアパート引っ越すにやっぱり溜めてた思い出の品

若葉燃ゆ

東京 大泉 木村 絹代

五月雨木々を洗いて若葉燃ゆみどり黄みどりさ緑の風
やわらかな藤の花房ゆらめきぬ話したきこと花にあずけて

五月母の日

東京 小金井 大橋よし子

カーネーション花屋の少女の笑顔良しつられてほほ笑み一鉢レジへ
アマリリス去年の球根あたま出し会いたき人に会えたる気のする

コラージュ

東京 浅草 若林 廣子

雨上がる五月の空はどんよりと寒暑の間を流る涼風
逝きし次子の写真を命の証にとコラージュを作り飾り慰む

誕生日

東京 月光 小池クミ子

キャンドルとスパークワインで乾杯し「イルレバンテ」にて誕生祝い
玄関にスイートピーの花飾り祝ってくれる子等を待ちおり

子雀

東京 王子神谷 片桐 信子

あどけなくチッチッチッチッと鳴く子雀の前に屈みて慈しむ吾
包丁を丁寧に研げば夕食の調理する手の軽軽として

春の陽

東京 堀切 新谷美智子

春の陽を背に受けひざには老い猫を乗せて本読む切なき恋の
路地裏にスラリと立てる裸木の先の先まで若葉萌え立つ

五月の苑

東京 大岡山 安髙 照子

むくむくと濃きみどりに光る苑その中一歩ずつ今日の買物
ファミレスのタッチパネルの註文がうまくいかなく曽孫に託す

夕暮れ

東京 小岩 浅井つね子

夕暮れの未だ明るさの残りし空惜しみてカーテン引くを迷いぬ
岩清水飲んでみてよと言うように赤いコップが飲み場に置かる

埼玉 寿 来生 陸夫

目じり下げ大きく広げた手に抱くは駆け来た女児の爺ちゃんならむ
女児とその祖父のカップル笑う声ひびく公園初夏の陽の下(もと)

ベランダにて

千葉 松戸根本 大和 治枝

五月晴れベランダに出で藤椅子に体をあずけしばし微睡む
鉢植えの丹精込めし花々が次々と咲きて楽園となり

夫逝きて

東京 東砂 内田 清子

夫逝きて結婚記念日ひとりきり「早すぎるよ」と町をさすらう
夫逝きてひとりごとのみ増えてゆく結婚記念日子等と集うも

蔓ばら

東京 東砂 山田 久子

大箱に届きし母の日のプレゼント梱包を解けばアーチの蔓ばら
赤き鉢にアーチの蔓ばら八分咲きうす紅いろの風吹き渡る

花いかだ

栃木 宇都宮 上野 マサ

花いかだ堀の水面を埋めつくし群れ居る鯉の姿をかくす
公園の桜や花桃咲き終えて庭のアザレヤ見頃となりぬ

福島 福島中央 高根澤和子

篁(たかむら)にすっくと目立つ今年竹若竹色の瑞々として
建築に調度品にと重宝され邪魔者の今竹は悲しも

竹の子

埼玉 草加氷川 太田美佐子

この冬に二度も手術を受けながら甥から竹の子届くは尊し
甥からの竹の子食すシャキシャキとお礼の短歌をラインで送る

草取り

宮城 仙台 佐々木裕子

早朝の清しき中に草を引く心地よき汗ポタポタ落ちる
梅雨前に庭の草取り済ませたい三日をかけてすっきりとなる

再会

茨城 知手 荻野 鈴子

青葉風煉瓦の館に再会す友の笑顔は昔のままで
六十年(むそとせ)の歳月越えて逢う友と過ごすひととき青春還る

九州旅行

北海道 札幌東 村重千代美

神様の気配感じる高千穂の峡谷流るる水音激し
新緑の大樟(おおくす)の木を見上げつつ太鼓橋こえ太宰府宮へ

水族館

千葉 北条 朝賀 榮子

懸命に芸をおぼえし海馬なり「笑う」演技の時にかなしも
パラソルのごとき軟体膨らませまた凋ませて水母は泳ぐ

緑の季節

長野 佐久平 三石るみ子

萌える木々右に左に揺れながら夕陽の中にいよよ輝く
大輪の魅惑の香り漂わせレモンイエロー薔薇の咲きたり

初夏に

埼玉 桶川東 本木トシ子

遠近にうす紅に咲くオキザリス寂しき庭に華やぎ添える
畑にて空眺めつつ茶を飲めば雉子が遠くで様子うかがう

木像観音

埼玉 伊奈 岩﨑千栄子

午の年十二年に一度のご開帳十一顔の木像観音
断ち切られ桜の幹の細枝より健気に花が咲き始めけり

新緑

茨城 結城 大塚 昌子

さ庭木の新芽まぶしく照りはえて窓に入り来る春の陽ぬくし
青空に白と緑がコラボしてどうだんつつじ真盛る庭辺

初夏の一時

千葉 東金 嶋田美保子

初夏のようまた来年とわらび伸び葉を広げたる空地に変わる
わらび摘み「腰大丈夫」と労りの上司の言葉心に沁みる

神奈川 南足柄 町田 義三

ジャージ着た女子高生の五人組聞こえる話し異世界の呪文
相模線終点迄の一時間大山望み歌を詠みおる

夫逝きて

埼玉 所沢中央 岡野 葉子

夫逝きて色々引き受け多忙なり悲しむ暇なく時は過ぎゆく
検査では値の異常見つからぬ時々痛む鼠径ヘルニア

バラ園

埼玉 前川 伊田 恵子

バラ園は友人宅の庭にある大きな鉢に花を咲かせて
バラ園は芳香満ちて豊かなり色とりどりの大きな花よ

五月の祝日

神奈川 光が丘 深澤 敬子

子供の日嫁の家族とバーベキュー吾子は焼いたり運転手まで
母の日は「花はいらない参加して」と短歌教室子孫六人

茨城 那珂 野上 貞子

いつの間にか田植えがすみて水田は早苗がそよそよ泳いでいる様
夫と並びすもう観戦テレビ前真剣勝負に思わず拍手

卒寿の父

東京 倫研 大庭江里子

屋根に乗り命綱付け唐桃の剪定する父卒寿となりぬ
卒寿の父柘植の剪定悪しき場も脚立を操り丸く刈り込む

連休

京都 鳳凰 干潟佐和代

連休に新社会人と大学生新たな門出うからで祝う
連休終え部屋の中は静まりて娘や孫らの笑顔思い出す

事故に遭遇(四)

京都 鳳凰 本田 幸子

介護ベッド手摺りもいるの問うてみる娘さらりと「当り前です」
痛む吾に「夕焼け写メール送ります」娘の心根しみる一人居

梅雨入り

愛知 東 熊田 光伸

梅雨に入りそぼ降る雨の郊外の青々とした田園を行く
夕立ちの過ぎにし後に鮮やかな夕焼雲のおりなす光

レゴランド

愛知 北 安藤むつ子

レゴランド孫の遊び場と思いきや招待受けて夫と童心
ミニランド日本の名所レゴで成るガリバー気分いっきに巡る

こぶしの木

京都 貞教 梅垣 照子

娘宅義母と我と三人でこぶしの木の下弁当楽しむ
娘宅芝生の中にこぶしの木大きくなりて月日なつかし

支部懇談会

兵庫 太子 髙野 裕子

新緑の川辺の喫茶にモーニング懇談会は会話弾みたり
改革後の支部の集まり未知数に不安はあれどふれずに終る

夫元気

岐阜 高田 清水 康子

老いた夫病院通い増えるけど曾孫とゲーム笑顔で向かう
夫は言う「おれ太ったか正座出来ぬ」とこれぞ元来大病の因(もと)

日々

大阪 東大阪市中央 岩田テル子

ラブコールとメールの届く旧友の年重ねても心は弾む
亡き夫の若き日の夢見し朝はピンクのブラウス装い出かける

ヌートリア

兵庫 西神中央 田中 和子

まだ白きイチゴ無残に噛みちぎりヌートリア来て畑は餌場
ヌートリア子連れで夜毎餌探し数多の足跡残しておりぬ

あの友・この友

岡山 児島 水島 實子

若葉美(は)し友は四国の寺々を巡りてゐるか山登りゐるか
ホームなる友は呆けてはいないかと便りも出せず日々は過ぎゆく

鯉登り

大阪 松原 藤井眞知子

幼稚園大きな鯉の登り立て「日本の伝統」大切にしおり
鯉登り見て子供の日気付くなり近頃街で見かけなくなりぬ

紫田花

愛知 春日井東 野村タツ子

紫の桐の花落つ一つ三つ風にまどろむ小さき地蔵おり
紫の桐の花咲く徳源寺大屋根つつむ五色の香り

夫の食事会

愛知 春日井東 長谷川啓子

退職し二十年過ぐも食事会の案内の来て夫えびす顔
後輩ら食事会終え夫に添い我待つ場所に送りくれたり

女孫

大阪 東淀川 牟田 繁

孫娘父の反対挫けずに貫き通し彼の元へと
父の言「赤児は見ない」の言葉にも孫は屈せず彼の元へと

竹叢(たかむら)

兵庫 寺家町 森井 清美

竹叢(たかむら)の姿見えねど鶯の澄み切りし音の清かに聞けり
稲美野の皐月のま昼間うぐいすの澄み切りし音の誇らしげなり

母と牡丹

兵庫 明石東 北村嬉多子

母逝きて二十数年過ぐ今も好みし牡丹燃え来美し
なんとなく母に呼ばれたここちして墓処に向かう牡丹かかえて

書道

兵庫 明石東 宮下加代子

しっかりと小筆を立ててかな文字を臨書したなら奥深さ知る
しっかりと墨をすり筆にたっぷりと同じ太さで篆書の練習

和歌山 伏虎 大浦まゆ美

孫の為「自転車修理」する夫の手際の良さに孫は見入りぬ
涼暮月(すずくれづき)宵の散歩に涼もとめ夫と我との影のより添う

田舎の夜

岐阜 長森 多和田美幸

田舎道行けども続く暗闇は愛車の照らすライト頼りに
見上げれば星と三日月鮮明に田舎の街は静かに流れる

兵庫 播磨土山 長谷中和美

難解な言葉出できてかきとめる吾の頼りはスマートフォンなり
図書館で借りた本をば読みはじむ同じページを何度も読みおり

桜見

岐阜 池田 石橋由起子

花見会心うきたつ春爛漫神明神社に高齢の友
満開下べんとう楽し会話なりブルーシート上椅子並べる

新緑

京都 はとりべ 和田ユクヱ

新緑の艶やか葉っぱに陽の射しぬ跳ね返す光ダイヤのごとく
亡き夫の遺影はかすかに微笑みて今命あらば二人で旅へ

春の日

静岡 磐田中央 加藤 貞子

伸びやかに青あおしげる紅葉の枝箱根バス旅腰のばし仰ぐ
「春のほがい」箱根方面バスの旅家族のように仲間寄りそう

買物

熊本 菊水 池田 恭子

じっくりとチラシ目比べ買物へ値上げの波に負けないように
開店のドアが開けば一目散特売の品めがけて走る

ぐみの実

熊本 菊水 河野 洋子

下の畑うれたぐみなりリハビリの仲間と食(しょく)す昔思い出し
若い子に勧めてみれば渋い顔ぐみは現代っ子には無理かもねェ

老いて日日

熊本 長嶺 森山ケイ子

「九十四」歳を越せるか思いて軒毎に見る花のいぶきよ
起きがけに木々を濡らしてしとしとと自然の恵み暫し停む

両棒餅

鹿児島 真方 柿元 啓子

七十路の小雨降る中両棒餅(じゃんぼもち)甘くとろりの夫とのデート
たまたまのイオンの出会いのおしゃべりはこのことを聞くことだったのか

熊本 平井 野口 早苗

夫と子と愛犬ナナと戯れぬもう戻れない美しき夕日よ
染みる様な若葉の傍に青鷺の五月の風に浸っています

大人の塗り絵

沖縄 具志川 翁長 静子

サークルで描き覚えし水彩画「大人の塗り絵」時を忘れる
梅雨時も心晴れたる塗り絵にて夫の介護に会話増えたり

布団に

宮崎 国富 井ノ上修二

春雷に起こされ夜中にふと妻は吾の布団にもぐりて来たり
突然に吾の布団にもぐり来し妻の寝息の顔をくすぐる

褒めらる

沖縄 西川 高嶺喜代子

最近は褒められしこと多くなり輪読上手と倫友の言う
かわいいと服褒めくれし倫友は食持ち寄れば旨いと声す

いつかは歩く

沖縄 西川 前里 清子

主婦のする仕事も夫が受けもってデイケアの吾の車待ちおり
病ゆえ足が自由に利かぬけど私の夢はいつかは歩く

麦秋の景色

大分 ふじが丘 田中千賀子

霊山(りょうぜん)は朝日を受けて山滴る朝夕眺めひと日に感謝
車窓より麦秋の景に酔いしれるも車内は賑やか外国の人ら

私の相棒

大分 ふじが丘 三ヶ尻ミヨ子

着る物や米研ぐボールや食器類姉に賜る暮しの相棒
とろみ食点滴までも受けつけぬ姉はひっそり眼開けいる

天和の春

大分 ふじが丘 南 陽子

幼き日父と弁当食べた日も今日も天和は萌え出ずる春
天和池に今が一番の輝きとしだれ桜は黙して揺れる

ブーゲンビリア

鹿児島 湯之里 折尾 陽子

見舞いにと夫の届けたるブーゲンビリア施設に飾り皆を癒せり
下校時に山に入りて筍を斧で掘りにし中学時代

那覇にて介護の妻と

沖縄 登野城 嵩原 督

車イスを押しつつ那覇の街をゆく介護の妻の笑みを励みに
「夫婦船」デュエットしてねと妻の言う涙あふれて声にならずも

十四の瞳

沖縄 石嶺 神谷 優子

真剣な眼差し向ける児童らの短歌クラブはやり甲斐に満つ
希望して短歌クラブに入りし児の十四の瞳輝きを増す

梅仕事

熊本 楠 遠山 一惠

収穫の少ないところ持ち呉れし兄の好意に梅干し漬ける
梅漬けの桶覗き込みあがる水確めながら数日待てり

花束よ

熊本 楠 本山 立子

OB総会賀寿の重なる花束よ悲喜こもごもの今の幸せ
OB会その後の食事沸き上がり区切りの弁当料理のうまし

花ふぶき

熊本 楠 渡邉由美子

車座の花見の宴に花ふぶき淡い桃色友らを隠す
会友の自慢話に花ふぶき微風に乗り勢いの付く

五月晴れ

佐賀 日の出 陣内 清美

五月晴れ朝日を浴びて草むしり手抜きも良しと体力あるまま
畑(はた)一面ピンクと黄色の草の花咲かせる草の根抜き難くもあり

一年生

福岡 津福 松尾 澄子

新天地の保護者つきそい登下校曽孫とママも新一年生
牛乳の苦手な曽孫は給食のおかわりルールに牛乳飲みほす

熊本 出仲間 堀田 好子

母の日に二人の嫁よりカーネーション思い馳せれば抱きしめたくて
忘れてた母を思いて涙する数多の不幸許し乞いたり

衣替え

福岡 到津 和田久美子

衣替え炬燵ストーブ冬服に急な暑さに慌てて終う
夏服へ早朝からの衣替え取り組みおれば五月晴れなり

永平寺

大分 鶴居 東納多美子

走り梅雨かもみじ艶めく永平寺深きふところ夫と登りゆく
永平寺回廊巡れば雲水の凛とうなじの青もみじに映ゆ

パッション

鹿児島 龍郷 島袋眞砂美

台風で収穫まえのパッションが落果の被害無念のファーム
早すぎた六月台風パッションの落果悲しき契約ファーム

腰痛

熊本 健軍 美並 昭子

七十年生きて二度目の腰痛に動きがとれず只橫になる
腰痛で床に伏せれば春の雨ぽつりぽつりと眠りを誘う

良き友

鹿児島 霧島 森永 ユキ

良き友をもちて幸せ老いの坂不調の我に言の葉沁みる
吾のことを子なればこそ心配しライン電話に心おちつき

異変かも

熊本 北の丸 松田都実子

鉢より出し松の盆栽地植えすもその生長に目を見張りおり
さ庭べに我が家の家紋の片喰草(かたばみそう)例年になき繁茂に目が行(ゆ)く