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Vol.30 解き放つ

Vol.30 解き放つ

倫理研究所 研究員 丸山貴彦

 この連載の執筆時はちょうど、4年に1度開催される国際サッカー連盟(FIFA)主催の世界選手権大会、「サッカーワールドカップ」に世界が熱狂していました。23回目となる今回は、史上最多の48チームが参加し、北中米3カ国が共同開催する初めての大会です。連日、テレビやインターネットでは試合結果やダイジェスト映像が流れ、試合をほとんど観戦しない筆者でさえ、大会の様子を自然と見聞きしました。

 試合に勝利したり期待以上の成績を収めたりすれば、ファンが歓喜に沸くのは世界中どこの国でも同じです。日本では開催地との時差があるため、試合開始が深夜や早朝になることも少なくありません。それでも多くの人が熱心に観戦したようです。

 日本代表の試合ともなれば、その盛り上がりは一段と高くなります。飲食店やパブリックビューイング会場では、大勢の人が得点や失点のたびに大きな歓声や悲鳴を上げ、勝敗に一喜一憂していました。また、日本代表が勝利した際や決勝トーナメント進出を決めた後には、東京渋谷のスクランブル交差点に興奮したファンが集まり、ハイタッチを交わしたり踊ったりと“お祭り騒ぎ”でした。

 筆者がそのような場所へ足を運ぶことはまずありませんが、多くの人と感情を共有し、盛り上がりたいという気持ちは理解できます。人間は古来、祭りやさまざまな祝い事を通じて、日常とは異なる特別な場をつくり出し、喜びや感動を分かち合ってきました。そうした「ハレ」の機会は、日頃の鬱憤を晴らし、人間らしい豊かな感情を取り戻す大切な役割を果たしてきたのでしょう。

 筆者の場合は、ライフワークである武道の稽古を通じて、普段から身心を開放してきました。体を大きく開き、柔らかく伸ばせば、自ずと気持ちは晴れます。心を開放したければ、体を開けば良いのです。朗らかな気分になりたければ、全身を伸ばして広げたら良いのです。大きな声を出しながら行えば、その開放感はより一層増します。

 そのための方法が、今回紹介する「青空体操」です。詳しいやり方は次頁で説明していますが、「アー」あるいは「オー」と声を出しながら、両腕を大きくゆっくり回すだけの簡単な体操です。「アー」「オー」と繰り返し発声しながら行うので、「青空体操」と名付けられました。

 その名前の通り、目の前に青空が広がることをイメージしながら行ってください。実際に青空の下で行うのも良いでしょう。単に腕を回すだけでなく、膝をゆるめ、背中を反らせるなど、全身を柔らかく使うことで効果が増します。さらに手のひらや腰などを限界まで開けば、体の中に溜まっている様々な滞りが一気に流れて解放されるでしょう。

 スポーツ観戦による熱狂も、祭りのにぎやかさも、私たちの心を元気にする大切な営みであり文化です。しかし、そのような特別な機会がなくても、自分自身の体を使うことで、心を解き放つことはできます。忙しい毎日だからこそ、ほんの数分でも視線を高く遠くに向け、体を開いてみてください。そのひと時が、未来に向かう確かな活力を育んでくれます。

 なお、2025年1月号から始まった本連載も、本誌『新世』の紙版での発行が今号をもって終了するに伴い、このような形で読者の皆様にお届けするのは今回が最後となります。これまでお読みいただき、ありがとうございました。今後も研究を続けながら、新たな形で皆様にお届けできるよう努めていきます。


青空体操

① 足は肩幅に開き、両手を体のやや前方に出した状態で立ちます。この時、手首を反らせて手のひらを大きく開きましょう。

②「アー」と声を出しながら、円を描くように両腕を後ろから前へゆっくりと大きく回します。

③  ① の姿勢に戻ったら、今度は「オー」と声を出しながら両腕を前から後ろへと回します。これを1セットとし、3回ほど繰り返しましょう。

両腕を回す時は上体を反らしたり、膝をゆるめたりしながら行いましょう。

POINT

声を出しながら体をひらくことで、気持ちにどういった変化があるかを味わってみましょう。